KORANIKATARU

子らに語る時々日記

これこそが戦う理由

ひさびさに実家を訪れた。 言葉少なに父と言葉を交わしながら、しんと静まる実家の台所に目をやった。 料理を作って動き回る元気な頃の母の様子が目に浮かんだ。 しかしその像はわたしの内にあるだけで、台所は空虚に静まり返りそこだけ時間まで止まったまま…

わたしたちはずっと一緒に生きてきた

もし息子たちが大学生になっても家に居着いていたら家内はたいへんだっただろう。 手抜きのできる性分ではないから食事から身の回りの世話まで全力を傾けたに違いなく、知らず知らず疲弊し、いくらやりがいがあったとしても幸せからは程遠い心境に置かれたの…

最終日はいつだって物悲しい

滞在も4日目を迎え、この日が最終日だと思うと一抹の寂しさを覚えた。 トレッドミルで走るのも4日連続となった。 走りながら思った。 ああ、寂しい。 身支度を整え、ちょうど正午にホテルをチェックアウトした。 前日、長男と原宿のナイキを訪れたが、わた…

この幸せが現在地点でありスタートライン

コーナーツインの部屋だと空が大きく見える。 この日も快晴に恵まれ、朝の青空に誘い出されるようにして家内と周辺の散策に出かけた。 が、空が澄む分、冷え込んだ。 わたしたちは目についたカフェで豆乳ラテのホットを飲み、好天の日曜午前を結局のところ屋…

昼から居酒屋でできあがった二日目

日課である運動は欠かさず、朝、トレッドミルで走りはしたが二度寝して昼まで女房と部屋で過ごした。 ホテルから東京駅へと少し進めば食事処が目白押しで昼食の場所は選り取り見取りだった。 休み気分を満喫しわたしたちは昼から居酒屋に陣取った。 料理が凝…

待ち合わせ場所は水道橋

コンサートが終わる頃合いを見計らって、ホテルの部屋を出た。 大手町から東西線を使って九段下で降り、水道橋方面へと歩いた。 まったく未知の夜道を歩いて、その新鮮さに喜びを覚えた。 二男に手渡す料理などを手に提げ、その手応えと併せ、生きていること…

今回もまた行き先は東京

上京する際、あれもこれもと家内は料理をこしらえる。 息子たちが喜ぶと思えば、労を全く厭わない。 それはそれでいいのだが、送ればいいのに持参するから荷物の嵩が増して重くなる。 もちろん運ぶのはわたしである。 だから、ちょいと愚痴のひとつでも口か…

たくさんの楽しい時間が並び立つ

小学生の頃、遠足が楽しみだった。 その日が近づくと気持ちが浮き立った。 教室を出て、駅へと進む。 男子で縦に連なり、隣の列では女子が連なった。 どこへ行くかなどどうでもよかった。 わいわいと過ごし、弁当を食べ、帰ってくる行程まで含めて楽しかった…

勢い余って踊り出す

早朝から起き出し、家内が息子たちのための料理づくりに取り掛かった。 広々としたリビングに流す音楽はこのほど来日したテイラー・スウィフトの東京ドーム・セットリストで、乗って聴くうち勢い余って家内が踊り始めた。 だからわたしはその様子を動画に収…

寿命尽きるまで、楽しみが尽きない

いい話はいつだって向こうからやってくる。 今年も出し抜けにいい話が舞い込んだ。 「いつかそんな風になればいいのに」 わたしはただそう漠然と思っていただけのことであった。 昨年時点で誘いがあったのに、だからわたしはチャンスの到来に気づかず、単な…

近所へと行って帰ってきたようなもの

寝心地は最上だった。 だから、いつもよりぐっすり寝入って気づいたとき、時刻は朝8時を過ぎていた。 コーヒーを2人分作り、それをゆっくり味わってから最上階のプールへと向かった。 ひと組の父娘が泳いでいるだけでプールはがらんとしていた。 娘の方は…

どんなときもスモールトークを躊躇わない

朝10時過ぎにチェックインし部屋の内容を確認してから、雨模様のもと傘を借り中洲方面へと向かった。 肌寒い博多の街路をぶらり歩いて10分ほどで到着し、店の前で記念撮影する若いカップルがいたので家内が声を掛けた。 釜山から来たというから、釜山談義で…

今年はもっと旅しよう

朝7時に駅のロータリーでタクシーをつかまえ家に引き返した。 家の玄関先で植木に水をやる家内をピックアップして、30分もせぬうち伊丹空港に到着した。 様々な行き先を告げる出発ゲートを左右に見て進み、今更ながらに気がついた。 ここから日本各地へはひ…

そりゃ若さと元気さが保たれる

このところ仕事に押され、ジムへと通う回数が減っていた。 ようやく金曜の夕刻、時間が空いた。 カラダは「飲み」より「ジム」を求めた。 少しずつ日が長くなっている。 季節の移ろいを窓の向こうに感じながら、たっぷり泳いだ。 40分を越えたところで疲労感…

母の孫たちはみな仲がいい

遅めの帰宅となった。 家内は牡蠣をあてにすでに一杯やりはじめていて上機嫌だった。 子どもたちの写真を見て思い出にふける家内の隣に腰掛けてわたしも夕飯の場に合流した。 家内の二万語が始まった。 この日、芦屋大丸で収穫があったという。 夕刻、魚介類…

よきものがずっと果てしなく循環していく

このところ毎朝、家内と食卓で向かい合って食事する。 ご飯と味噌汁に加え、焼いたたまごと鮭が付くくらいの質素なメニューであるが、朝から快調な家内の二万語が添えられて賑やかで楽しい。 こんな素朴な朝があるからいつだって一日の出だしは幸先のいいも…

一ヶ月遅れで新年がスタートした

重しが取り払われたと分かった途端、足元がふわふわとし始めた。 それで足取りも軽く、わたしは寄り道して帰ることにした。 行き先は正宗屋で、そこで生きた心地にひとりしんみりとひたることにしたのだった。 1月に入り、難度の高い任務を担い、それをこな…

歌って踊るような身振り手振りで陰気な話に抗った

先日、東京で家内と食事していたときのこと。 隣で向かい合う男女の会話がヘイトめいた様相を帯び始めた。 最初は関西人はどうのこうの、京都人は大阪人はといった他愛のないレベルの話であった。 が、次第、対象が拡大しはじめた。 中国人はああだこうだ、…

余白のたっぷり詰まった充実の日曜日

日曜の朝、朝日新聞の一面に目がとまった。 医局医師に課される長時間労働の問題が取り上げられていた。 全国医師ユニオンによる勤務医についての労働実態調査によれば、死や自殺について時々考える勤務医師が24.2%もいて、20代に限れば日常的に死や自殺を…

向かい合わせに座ってその間に二人がいる

家内はヨガへと出かけ、わたしは長い時間をジムで過ごした。 ここ数日まったく足を運べていなかったから、ひさびさ泳いでその心地よさにひたった。 土曜の午後、人影のほとんどないプールを悠々と行ったり来たりし、あっという間に60分が経過した。 続いてマ…

B面があってこそのA面

この夜も家内と待ち合わせた。 先に着いたので大阪下町の夜道をぶらり歩いた。 寒さが漆黒の度を深め、なんとも心寂しい。 いつしか眼前の風景とここ最近の心模様がシンクロしはじめた。 ときおり先の見通せない懸念材料などが仕事に付随する。 だから普段は…

随所に楽しみが必要で燃料が欠かせない

寒波が到来し、回り回ってその影響がちっぽけなわたしの日常にも及んだ。 電車のダイヤが乱れ、訪問先が遠方だったからとても約束の時間には間に合わない。 謝罪の連絡を入れ、状況を伝えた。 わたしからの連絡を受け、いち早く気がついたのはお相手の方だっ…

潤いだって循環する

仕事が長引いたので夕飯を済ませてから帰ることにした。 ああ、やれやれ。 そんなため息が出たところでメッセージが届いた。 箸を運ぶ手を休め画面を見ると長男からだった。 「これだけ働いてもたったこれだけ」 給料日の前夜、明細をもらって彼はその金額を…

夢から覚め自分に目覚めた

入社式は昼からのスタートだった。 交通の便がいまひとつだったので会場までわたしはタクシーを使うことにした。 運転手に行き先を告げ、連れて行かれた場所は路地が入り組む物寂しいような下町だった。 タクシーを降り会場とされる建物の中を探ったが、廃屋…

成就への道を最短経路で突っ走る

日生頭島から牡蠣が届いた。 家内とキッチンにて並び立ち、鍋に蓋をし牡蠣を蒸していった。 殻の開いたものから取り出し、レモンをかけタバスコをふり、順々に頬張った。 濃厚で実においしい。 牡蠣ほどものによって味に差のある品はないだろう。 次は元旦に…

銀座で食事し苦楽園に思いを馳せた

3時開店の店で昼食をとる。 だから朝はいっぱい食べておこう。 通常、ビュッフェでは慎ましく過ごす。 しかし家内がそう言うから解き放たれた。 二人がかりであればどうにかなる。 そう考え、前日頼んだものを除きメインどころを全種頼んだ。 思った以上の…

のんびりと過ごす週末

そこらのビュッフェとは訳が違った。 すべてにわたってレベルが高く、あれもこれも食べていいなか、何を選ぶか迷いに迷った。 雨がパラついていたので朝食後、部屋に戻ってゆっくり過ごした。 家内は部屋でくつろぎ映画「パラサイト」をみて、わたしは部屋で…

何度も何度も東京タワーに目をやった

単発の業務があってこの日家内を伴い東京へと赴いた。 家内は早朝から起き出し息子に差し入れる弁当をこしらえ、そのついで車中でわたしが食べる朝食も作ってくれた。 ただわたしのは息子の弁当に比べ格落ちもいいところで、松竹梅で言えば松と苔くらいの差…

空気を読んで流れを変える

台湾からの来客があって小雨降るなか芦屋へと向かった。 待ち合わせ場所である竹園ホテルを訪れ、通訳を交え打ち合わせを行った。 仕事が立ち上がり、今後あれこれお手伝いすることになった。 そして台湾を起点に今後アジア各方面の案件にも関わっていくこと…

愛らしさが相乗効果で倍加する

帰宅すると夕飯の支度が整っていた。 いい焼き目のステーキがトップバッターで、続いて登場したぶりの照焼も味で並び立ち、ハイボールが進んだ。 締めは前夜のクエ鍋の出汁で作った雑炊で、この日も大満足の夕飯となった。 食事を終えて家内が二男に電話をか…