KORANIKATARU

子らに語る時々日記

商店街きっての名店に寄って天六の福効医院を思い出す


各地で今年最大の暑さを記録した4月27日、陽射しが徐々に陰っていくなか43号線をひた走り帰途につく。
Trinity の Scarborough Fair が流れ、この夕刻の空気にあまりにぴったりなのでリピート演奏にした。

日中の業務から解放されて心穏やかな夕刻。
曲とともに様々な思い出が前方から浮かんでは後方へと流れ去っていく、慣れ親しんだ43号線がそのような空間へと変貌していく。

窓の隙間から入ってくる風の熱気はすっかり薄れ、ひんやりとさえし始めている。
遠く過ぎ去ったものへの旅情と郷愁が車内の空気と綯い交ぜとなって、ただただ心地いい。


間もなく家というところ。
焼鳥屋の前でクルマを停める。
地元商店街きっての名店である。

誰でも知るところであるが、ここの焼鳥は素晴らしい。
美味しいだけでなく、店が清潔、店員が愛想良くて親切。
もちろん焼鳥だけでなく、陳列されるすべての品が上質な部類に入って、なおかつお安い。

夕飯で食べきれずに残っても明日の子らの弁当にすればいい、と手当たり次第、男買いする。
もちろん、それでも財布に優しい。だからこそできる男買いである。

味よし、品よし、人もよし、全科目優良、そのようなお店と言えるだろう。

無理やりあえて欠点を挙げるとすれば、この店のお味を覚えると、そこらありふれた焼鳥屋など、食えたものではなくなってしまう、ということくらいであろう。


食後、子らは各自の部屋に引っ込んだ。
両人とも誰に似たのか、日々に真面目なお人柄。
長じて以降、課題をすっ飛ばすことなどあった試しがない。

私はリビングで、ハイボールを片手にビデオを見始める。
映画ではなく、昨日のラグビーの試合を流す。
子らのシャツやらをアイロンしつつ横目で見ていた家内も手を止めビデオに集中し始めた。

一つ屋根の下、このように過ごした時間が過去となり、やがて奥深いところで熟成した後、折に触れ、蘇る。
今日、43号線で数々浮かんだ名場面のように、この瞬間も、あっ、と強く情感に沁み入ってかつ心地良く思い出されることだろう。

と、メールが来た。
天六のいんちょからの返信だ。

飲み、についての男子の交信。

日程を決めるため、明日は必ず、天六の福効医院を訪れねばならない。

家族のようにあなたを診ます。
家族を心底愛する天六のいんちょであるからこそ生まれた福効医院の理念であるのだろう。
子らを可愛がり、妻に優しく、ご老人の方々をいたわる天六いんちょの姿が思い浮かぶ。

地元商店街きっての名店も素晴らしいが、天六の福効医院だって一歩もひけをとらない。

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