前半のメインイベントは厚岸コンキリエの炙屋。
釧路から厚岸まで右手に見張るかす太平洋を臨みつつ最果ての道の駅に到着したのは昼間際だった。
私たち4人の入店で座席は埋め尽くされた。
さすが北海道ナンバーワンとの呼び声高い道の駅である。
テーブル着席の前に「焼いて平らげる」海鮮や肉やらを選んでピックアップしていく。
獲物あふれる野に猛獣を放ったようなもの、子等がトレイにどんどこ具を載せていく。
厚岸の「岸(ケシ)」はアイヌ語で牡蠣を表わし、ここを訪れればバケツ詰めの牡蠣を焼くのが定番であり、近接する釧路は日本を代表するサンマの漁場、だから当然その切り身も選ぶ。
セオリー通りの打順一番、二番に引き続き、ここらは豚も美味しく、北の海ならサザエもウニもアワビもホタテも外せず結局はその打順のラインナップはカオスの様相を帯びることとなった。
子らは手足あるジョーズのように網の上で焼かれた肉片をイクラ丼とともに食らいつくし、最後には名物牡蠣モカアイスまでぺろり平らげた。
厚岸の海を眺めながらアイスを食べていると、齢八十過ぎであろう老夫婦の旅行者が横に立ち風に吹かれながら海岸線に目を細めている。
長男はキラキラとまばゆい海よりも、その連れ合いの姿にじーんと来たという。
風光明媚に触れるだけが旅ではない。
この夕刻、運良く霧の摩周湖の霧は頭上高く上昇し、寒さにぶるるる震えつつも究極の青をたたえる湖面の全貌を目に留めることができた。
良き旅としての完成度がますます増しつつある道の途上である。