KORANIKATARU

子らに語る時々日記

家族で生涯分かち合える宝物のような旅行となった。


午後8時05分、ANA780便が伊丹空港に無事着陸した。
手荷物受取のため到着ロビーへと向かう。
まずはむっとくるような空気で大阪に戻ったことを実感する。

ターミナルビルの窓の向こう、花火が数発打ち上がって旅客の列が止まる。
花火が打ち上がり続け、夜空が様々な紋様で彩られていく。

ちょうどこの時間、伊丹花火大会が始まったのであった。
たまたまの巡り合わせにしても粋な計らいのお出迎え。

ツキに恵まれ続けた旅行であった。


最終日早朝、網走湖に7羽生息するオジロワシのうち2羽を頭上に戴きつつ湖面を進む。
翼広げれば2mは優に超えるであろうその体躯はまさに怪鳥、なるほど国の天然記念物にふさわしい。

二男が言う。
この迫力は春の西表島で見たカンムリワシを遥かに凌ぐ。

朝4時半から起きだした眠気も吹き飛んだ。


五年前は旭川、札幌、小樽と巡って、行き当たりばったり寿司ばかり食べた。
しかしもちろん、寿司ばかりの北海道ではない。

今回、北の大地を巡るにあたっては綿密に計画し美味珍味を余さず味わうことを念願した。
そして、スープカレーを除いてはすべて一通り口にすることができた。
ジンギスカン豚丼もカニをはじめとする海の幸もアイスもフルーツも堪能し尽くした。

そして、〆は当然にラーメンであった。
出発間際の新千歳でグルメワールドに走り、函館麺厨房あじさいのテーブルを家族で囲んだ。

搭乗直前には名物弁当を買い込み、最後の10分まで食への欲望を全開にし続けた。


お腹がブクブク膨れただけではない。

今もカラダはポカポカだ。
毎夜、知る人ぞ知る秘湯に浸かって、疲労は癒され肌は芯から一面に渡って磨き上げられた。

網走湖畔の温泉が色褪せるほど、太古の香り芳しい十勝のモール温泉、町全体に硫黄立ち込める川湯温泉は、特筆すべき名湯であった。


もちろん、景観はどこもかしこも素晴らしく、目は安らぎだから心は終始くつろいだ。

釧路や霧多布の湿原や摩周湖や層雲峡もいいけれど、道東北部、オホーツク海沿いの最果ては群を抜く美しさであった。

知床五湖では老いた母を車椅子に乗せ観光する中国人の家族連れを見かけた。

今生、必ず見せておきたい、孝行息子はそう考え母をはるばる「おぶって」日本までやってきたのだろう。

その価値あり。
心くまなく換気され隅々まで洗い清められるような美しい世界がそこには広がっている。


帰阪し一夜明けた。

長男は今朝スーパー模試を受け、二男は散髪などして二人とも明日からの登校に備える。
家内は洗濯に忙しい。
私は事務所で今週の予定を組み立てる。

日常へと舞い戻ったが、目を閉じれば、北の大地。
家族で生涯分かち合える、宝物のような旅行となった。

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