KORANIKATARU

子らに語る時々日記

何が嬉しいといってこれ以上の喜びはないと皆が口々に言う。


午後からは晴れるはずが雨が降り続く。
Amazonから届いたばかりの片山杜秀さんの「国の死に方」と「未完のファシズム」を空き時間の読書用にとカバンに入れる。

先日の朝日新聞の耕論の欄で片山さんの論評が掲載されていて目を引いた。

東京五輪の招致演説の際、福島原発について安倍さんが「アンダーコントロール」と言い切った。
正直に話せば夢も希望もない。
であれば、「ウソともとれるあいまい語も許される」。
そのような空気が震災後の日本に流れている。

といった話から始まる。

『政治家は何か魅力的な言葉を振りまかないといけません。
虚構を掲げてでも人々に夢を見させ刹那的でもいいから人気を集めないといけない。
でないと政治は回りませんから。
だからすごいことが起きるという。
でもそれは起きない。
人々は幻滅する。
ごまかしと幻滅。
この繰り返しが今の政治である』

このように現在の政治の有り様を端的に指摘し、「モノは言いよう」とばかり「煙に巻くように」「あいまいな言葉を連発し、あいまいなゾーンを広げいかにごまかして政策を押し通すかということで政治を回している」と安倍政権の在り方に苦言を呈す。

「予算には限りがあり、現状維持ですらあっぷあっぷでもはや大したことはできません」と政治家が真実を言うことはない。


先日発表された「新三本の矢」についてはまさに片山さんが指摘したとおり、その標本とでも言うべきレベルの曖昧さであった。

まるで新しい映画のタイトルみたいなその「新三本の矢」は「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」の3つから構成されている。

毎度のこと、言葉のセンスに狼狽してしまう。
「希望、夢、安心」「生み出す、つむぐ、つながる」とくれば安っぽいポップスの歌詞みたいであり、そのフレーズに赤面しそうになるのは私だけでないだろう。

安倍さんは会見の場で歌詞を見ながらカラオケで一曲ご披露したようなもの。
お上手お上手と取り巻きは拍手喝采となったことであろう。

で、「一億総活躍社会」を目指すというのだから、文字面を見ただけでぐったりとした疲れのようなものを感じてしまう。
言い換えれば、息絶えるまで誰もゆっくりなどできない社会ということではないのか。

政治家が真実を伝えず絵空事ばかり歌うようであれば、各自が自衛策として背後の真実を汲み取り要は「予算には限りがあり、現状維持ですらあっぷあっぷでもはや大したことはできません」と言っているのであると読み直し、個々具体的な対策を講じるのでなければならないのだろう。


長男の学校では定期試験が一週間後、二男の学校では二週間後と迫った。
それが終われば合宿や米国研修などの行事が続く。

33期はじめ星のしるべ勢はおしなべて経済的強者だが私は下層に属する倹しい庶民。
子が可愛やと出費すればその分、自らの老後の施設入所時期をワンシーズン先延ばしせねばならないようなものであるのに、子のこととなると嬉々払う自分がいる。

自分では大丈夫と思いつつ、私のようなメンタリティの者こそ振り込め詐欺といった手口に嵌りやすいのだろう。
我が事であれば用心深く、また我が事であればどうなってもいいと思うが、もし子が窮地であると思い込まされれば危機察知機能が麻痺してしまい、その麻痺さ加減にご機嫌麗しゅうごめんあそばせ気づかないということになる。

そう考えれば、振り込め詐欺といった類の犯罪の極悪非道さに強い憤りを感じざるを得ない。
親心につけ込み、僅かずつ積み上げてきたなけなしをかっさらう。
非道いにもほどがある。

話が逸れた。

この先の日本がどうなろうとおそらくご自身は痛くも痒くもないはずの首相が希望たっぷりに語れば語るほど、根暗な未来が見え隠れする。

もし私が独り身の人間であれば、お金だけが頼りと考え拝金を正義とするような生き方を突き進んでいたのかもしれない。
しかし子がいれば、お金は必要だがそれが何にでも勝る訳ではないと体感でき、よくよく考えれば、私も人の子、つまり私の親もそうであったであろうという当然に気づく。

何が嬉しいと言って、子と出合えたこと以上の喜びはない。
四十過ぎて友人らと話をすればそれぞれの子の話題となり、皆が口々にそう言う。

それについての共感が、人の世にあっては最重要であるという気がする。

友人を大事に思えばその子も大事、もちろんだからその親も大事。
先行きの不安増大するばかりの日本であるが世相がどうであろうと、隣人と共感取り結べるのであれば、社会自体は世知辛くはならないし、若ければ子をもっと作ろうという気にもなるだろう。

親を大事にして、子をしっかり育て、友人を気遣う。
単純素朴にそんな当たり前が、この先の落日の世を少しでもマシなものにする最重要なキーになるのだろうと思う。

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