KORANIKATARU

子らに語る時々日記

西大和「進路の手引き」を読んで感動した

仕事を終え西天満から南森町へと駅に向かって歩く。
夜風涼しい宵の口、コンビニ前ではサラリーマンが缶ビール酌み交わしささやかな宴に興じている。
酒盛り用のテーブルまで設えてあって、ちょっとした立ち呑み屋といった装いだ。

くつろぎはじめた街を後にし家路についた。

連休明けからイレギュラーな用事が立て込みやや押され気味、疲労は閾値を超えていたが、この日通りかかったマッサージ屋で60分の施術を受け、カラダは幾分軽やかとなっていた。

疲労に居座られると、視野狭く思考がうつむき加減となって、ろくなことがない。
人の手を借りてでも真っ先払いのけるべき筆頭が疲労と言えるだろう。

帰宅しあてを作ってもらって晩酌を始める。

テーブルに置いてあった西大和学園「進路の手引き」なる冊子を手に取った。
250ページもあってかなり分厚い。

冒頭、学園長が問いかける。
将来、どんな仕事をするのですか。

10年後、全世界の子供たちの65%はいまは存在しない職業に携わる。
また、いまある仕事のうち約半分はコンピュータに代替されていく。

そして、こう語る。

一人の人間の進む道は一本しかない。
世界には何十億もの人が暮らすが、同じ人生は二つとない。

どのように生きるのか。
それを決めるのはあなた自身であり、その道を切り拓くのもあなた自身である。

そこに並ぶ文字が熱を帯びていると感じられるほどの強い語りかけだ。
大人であっても心揺さぶられる。

その後に、進路担当者の言葉が続く。
太字で書かれた言葉が、目に焼き付く。

人生は一度きりである。

今更ながら生きてあることの真実を告げ知らされたような思いとなった。
そうなのだ、人生はたった一回こっきりのことなのだ。

いい歳した大人であるのに、わたしはその言葉に鼓舞された。

それら巻頭の言葉に続き、近年の大学入試をとりまく状況や傾向、今後の動向がデータとともに詳述される。
また西大和学園の諸先輩のデータが網羅され日頃の成績と大学の難易度の関連が一目瞭然となる。

更に各分野の先輩が職業者としてバラエティに富んだ視点から後輩に語りかけるページが続き、大学合格を果たした直近年度の先輩から後輩への心のこもったアドバイスが数々並び、最後には、不合格体験記まで掲載されている。

後輩らを励まし勇気づける言葉に満ち、また、様々具体的な場面で参考となる情報が集約的にまとめられている。

先輩らの思いが、この手引きを媒介にして、しっかりと縦に繋がっている。
そう思えた。

「進路の手引き」というタイトルであったが、単に大学合格の成果について述べられているのではなかった。
あくまで、主眼は職業に置かれている。

職業者としての充実と幸福を得るため必須の通過点として大学が軽視できないから、ちゃんと直視しようという学校のスタンスであることがたいへんよく理解できた。

東大何人、京大何人という単純化した話は分かりやすく耳目ひくが、その言葉を糸口にしていざなう先は、「将来、どんな仕事をするのか」という各自の自発的な自問自答なのであった。

さすが西大和。
これだけ凝って精緻なものを編集し形にするのは、簡単なことではないはずだ。

生徒らの目線を上げ、彼らが堂々と夢を語ることができるよう、学校が全力でサポートする。
その確たる志しがこのような冊子一つにも表れている。

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