KORANIKATARU

子らに語る時々日記

昭和の風貌見せる大衆酒場で心底くつろぐ

わたしが八尾で業務を終えたとき、家内は四天王寺の駅に向かおうとするところだった。
聞けば学校の用事がちょうど終わったばかりだという。

天王寺で待ち合わせることにした。

素晴らしい好天の一日であった。
彼方まで透き通って見えるほど頭上の視界は良好で、青く澄んだ空を源とする涼風が終始地上に吹き渡った。

この爽やかさ、大阪だとは思えない。
殺風景な工場地帯にあって、目にはさやかに見えねども、北の大地で風に吹かれるかのような夢見心地を満喫できた。

キューズモールの前で待つこと10分。
家内が現れた。

行先は阿倍野の正宗屋。
一度は家内を連れ訪れねばならない、かねてからそう考えていた。
またとないチャンスであった。

タイミングよくテーブル席に空席があった。
向い合って腰掛ける。

時代に逆行するかのよう、昔ながらの大衆酒場の良き趣きがその濃厚さを増し続けている。
どこからどうみても、昭和のまんま。
厨房の活気も店員の言葉遣いも客の顔ぶれも、正宗屋においてはすべてが一昔前の風貌であって心落ちつく。

まずは瓶ビール。
カツオのたたき、まぐろ、はまち、きずしと刺身類を頼む。
おでんの牛すじと玉子も外せない。
もちろん、どて焼きは必須であって、必須の両輪、いいだこ煮も忘れない。
豚のあぶりをタレで頬張り、ニンニク唐揚げをかき込んでこれで疲労も一網打尽。

素材よく出汁に深みもあって、かつきちんと人の手の入った料理であるからどれもこれも旨く美味しくホッペが落ちる。

物珍しさからキョロキョロし通しの家内であったが、今度はママ友を誘うとまで言ったのであるから、正宗屋の実力を認め結構気に入ったといえるのだろう。

ほんのり酔って、隣席のおじさんらとの間で会話も生まれ始めた。
現場でひどい目にあったよというおじさんらの話に相槌を打ちながら、焼酎をお代わりしていく。

酔いがまわった頃合いでお開き。
これまでになかった楽しい夕飯となった。

酔いの火照りにちょうどいい。
涼風吹き止まぬ街を並んで歩いて家路についた。

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