KORANIKATARU

子らに語る時々日記

誕生日のありふれた一幕

家内を伴い投票所となった自治会館に向かう。

陽は傾き、風やわらかにそよぐ夕刻。
前を若い夫婦が歩いている。
その仕草を二人して真似て後につづく。

夫婦揃って選挙区も比例区もおおさか維新の会に票を投じた。

かつての大阪は、市民や府民の胸ぐらつかむかのような行儀悪い職員が跋扈していた。
橋下徹が現れて、今度は彼らが胸ぐら掴まれ、職員の態度は一変した。

たとえばそのような些細なことひとつとっても、橋下徹が果たした役割は大きかった。

橋下徹が政界を引退しおおさか維新の会の陣中には松井一郎や浅田均の顔が見えるだけとなったが、一見脇役に見えるこのお二方、よくよく見れば黒澤映画に登場するような気骨あふれる野武士の風貌。

主役を張る三船敏郎なくとも絶大な存在感があって一縷の希望を彼らに託さずにはいられない。
掲げる政策を成し遂げて、ぜひとも日本の新しい局面を切り開いてもらいたい。

この夜、二男が焼肉係を買って出てくれた。
わたしはワインを開け、家内は凝りに凝ったサラダを盛り付け、長男が食器を並べる。
実は今日がわたしの誕生日であること、誰にも明かさず普段通りにぎやか美味しい食事を楽しんだ。

食後は和室に引っ込む。
このところは一階和室で過ごすことが多くなった。

我が家を見渡せば、もっともここが凉しい。
野生のクマが涼を求めて水辺の木陰でくつろぐようなものである。

長男が和室を訪れた。

二人寝転がって選挙の開票速報を見つつ、学校の話などを聞く。
学祭では3本、ダンスの催しに出場するのだという。
このフォワード君、生まれ持っての肉体派。
外へと向かってカラダが動いて声が出る。

風呂の支度が整って、長男と入れ替わり次に二男がやってくる。
裏庭の草木が階上の照明を受け深緑色に光って見える。

二男からこの日ひとり見てきたという「アリスワンダーランド」について話を聞く。
選挙速報などどこ吹く風となり、映画談義で盛り上がる。

インド映画の筆頭に上がるのは「スラムドッグ・ミリオネア」だと学校の先生が言ったらしい。
それは違うと彼は先生に対し異議を述べた。

スラムドッグ・ミリオネアはインドを舞台にしたイギリス映画であって、いわゆるボリウッドではない。

インド映画というならば、本場ボリウッドからチョイスすべきだ。
だとすれば特筆すべきインド映画としては「きっとうまくいく」が本命として挙がり、「恋する輪廻」が対抗馬となる。

映画について中学生ながらあっぱれな見識誇る二男である。
父子映画談義はいつまでも尽きない。

あそうそうとカバンからDVDを取り出し二男に手渡す。
「ステューデントオブザイヤー」。
インド映画である。

歌と踊り満載、青春があって友情があって恋がある。
インド映画が持つべき要素をすべて備えた傑作だ。

二男が期待に胸膨らませる様子が手に取るように分かる。

このようにして、わたしの誕生日は過ぎていった。