KORANIKATARU

子らに語る時々日記

知っておかねばならぬことをたっぷり学べた

先日の夏会、我らが同期きょう先生も駆けつけてくれた。
これ幸いとわたしは「子どもを守るために知っておきたいこと」にサインをもらった。

13名の執筆者のなか、きょう先生も名を連ねている。

昨今、急速にその名が行き渡り数々の誤解にさらされる発達障害について、解明の途上にあることを踏まえたうえでの明快な著述が為される。

分かりやすく丁寧な言葉づかいに導かれて、「発達障害なのかそうでないのか」といった議論以上に「その特性にどう向き合い支援するのか」を考えることが何より重要なのだという理解に達することができる。

また、大人の自己欺瞞の巣窟とも言える体罰や虐待について異を唱え、親子双方が達成感を得られるような代替案が具体的に述べられる。

守るべきものに寄り添う立ち位置が鮮明で、読んでいつものとおり「ほっこり」とさせられる。
きょう先生の人柄そのままの文章であり、殺伐の度を増す世にあってその正反対、この救済感は人徳と学識のなせる業というしかない。

書籍などでもっとアウトプットがあればいいのに、とは本人にも伝えたが、そう思う人は少なくないだろう。

同著のなか感銘受けた箇所には至る所に折り目をつけた。
もっとも深い折り目となったのが、133ページ。
松本俊彦氏の文章である。

そこにこうあった。
いのちの大切さを子どもに伝える場合、「いのちが大事」だと言うのでは抽象的で難解に過ぎる。
「あなたが大切」というメッセージでこそ子どもにも分かりやすくて、きちんと伝わる。

ああ、その通り、と読んで身震い覚えた。
説いて聞かせるような理屈や一般論などより先に、真っ先にこのような言葉が来るべきなのだ。

そして、この「あなたが大切」という言葉に本書のエッセンスが集約されている。
この本は、「あなたが大切」というコンセプトのもと編まれた書籍であると言っていい。

テレビなどでお馴染みの宋美玄氏はじめ錚々たる専門家が、育児、食、薬の処方など多分野に渡って、誰もが一度は目にしたことのある、まことしやかな俗説に対峙していく。

「あなたが大切」というその反対側の世界が、見過ごせないほど肥大してきているという時代背景があってこそ登場を待たれた本とも言える。

一般人が検証能力を欠くのをいいことに、悪徳不純な動機があってのことなのかはいざ知らず、デタラメ、インチキが大手振る。
それを信じた大人を通して大切であるはずの子どもたちが被害を受けぬよう誰かが守ってあげねばならない。

「子どもを守るために知っておきたいこと」、タイトルどおり、本書を手に取れば知っておかねばならぬことをたっぷり学べる良き読書ができるだろう。

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