KORANIKATARU

子らに語る時々日記

ギスギス感には風呂がよく効く

午後に空き時間があった。
次の予定まで2時間ある。
移動時間を差し引いても1時間は余る。

そうだ風呂に入ろう。
そう思い立つ。
カバンにはいつも洗いたてのタオルを忍ばせてある。

グーグルマップで探せばすぐそばに風呂屋が見つかった。

カンカン照りの往来を一歩逸れ、湯気のマークの暖簾をくぐる。
熱々の湯につかると長い溜息がつい漏れた。

この日は雑事で骨が折れた。

家の空調のリモコンがなくなって、同じ型式のものをネットで探すが、なかなか見つからない。
血眼になって探しまわって、希少な在庫にやっとのこと辿り着いた。

わたしがひとつ頂戴したので、日本にその在庫は残り1個という状況となった。

また難攻不落なほどに連絡のつかぬネット事業者にもこの日ようやくアクセスを果たせた。
ほんのちょっとの変更事項、それを伝えるために2日を要した。

なにしろ電話がつながらない。
つながったとしても、電子音声が延々と続いて数々の関門をくぐり抜けねばならず、ようやく生身の声に到達したと思ったら部署違い、また一からかけ直せと、にべもない。

半ば諦めつつも、まるでサッカーのゴールが決まる瞬間みたいにひょんな拍子に電話がつながり、本当に些細な要件をやっとのこと伝えることができた。

便利なようで、持って回ったような面倒が絶えぬ現代社会である。
現役で仕事バリバリの大の大人でも四苦八苦。

少し情報に疎ければ、リモコンは二度と手に入らず代わりにエアコン本体を買う羽目になり、ネット契約は些細な変更事項も届けられず無駄なお金を引き落とし続けられることになる。

風呂に入って、ギスギス感も和らいだ。
つまらぬことに要した時間を大目に見るような穏やかな気持ちになって、脱衣所の石鹸の香を胸いっぱい吸い込む。

天窓から燦燦と注ぐ光が場末の脱衣所に聖なる趣きを与える。

わたしはすっかり清められ、はつらつ笑顔で次の訪問先へと向かった。