KORANIKATARU

子らに語る時々日記

不思議と言えば不思議なめぐり合わせ

グランドに降りるとちょうど練習後のミーティングの最中だった。
中高生が一体となって円陣を組んでいる。

夕日を見るならここをおいて他にはない。
絶景が夕陽ケ丘という地名の由来となった。
わたしがこの場所に通っていたのは30年近くも昔のことであるが、ここは千年もの時をさかのぼって風光明媚の地であった。

いままさに夕刻。
西に傾く陽がなにわの地を赤く染めはじめ、そのパノラマを背景にして立つ二男の姿が見える。
隣り合って並ぶのは先日我が家を訪れた友人たちだろう。

輪の向こう側、なにわのランドマーク通天閣もちょこんと顔をのぞかせている。

二男の実物を目の当たりにして驚いた。
でかくてごつい。

日頃わたしが見ている二男は幼い頃の面影であって、実際の寸法比の配置図のなかに置いて浮かび上がる実像とはかなりのタイムラグがある。

わたしは二男に手を振るが彼は一瞥もくれない。
それもまた凛々しい。

このシーンは必ず残しておくべきだと気づいて、慌てて写真を撮った。
そして飲み会の会場へと移動しつつ、家内に写メを送った。

家内は長男の学校を後にしちょうどその頃、帰宅の途にあった。
長男の方は一足先に学校を発ってすでにラグビーの練習場に入っている。

試験間近であるがラグビーも休めない。
両方こなせれば大したものだがそうたやすく事は運ばない。

時間は瞬く間に過ぎ去り体力には限界がある。
悪戦苦闘を経てもがき苦しみ、ようやく自らにとって鉄板の時間スタイルというものが見い出せるのだろう。
それまでは苦心惨憺もやむを得ない。

家内はわたしが送った写メを電車のなかで見た。
携帯の小さな画面であっても、かつてのベイビーボーイの男っぷりが伝わったはずで、ひとしりき感慨に耽ったに違いない。

駅に着いて電車を降り家内は改札に向かった。
と、前を歩く二男の背中が目に入った。

そう、そのとき二男は部活を終えて家へと帰る途中であった。

いま写真で見たばかりの実物がそこにあった。
家内はその背に駆け寄った。

そのときわたしは、飲み会の場でスタンバイしていた。
乾杯、と雄叫びをあげるのはもう間もなくのことであった。