KORANIKATARU

子らに語る時々日記

秋、その尽きせぬ魅力が最高潮となる

街を歩けばとてもいい光景に出くわすことがある。

地下鉄阿波座で乗り換えるつもりが、考え事をしていて乗り過ごしてしまった。
仕方なく弁天町で環状線に乗り換えることにする。

地下鉄弁天町駅で降りJRの改札へと向かう。

前に二人連れ。
結構なご高齢であろう老人と小学校低学年風の少年が手をつなぎ歩いている。

どこからどう見ても祖父と孫。

バスの話を二人でしている。
駅を降りバスを使って家へと帰るのだろう。

後姿が微笑ましい。
追い越さぬよう、ゆっくりゆっくりわたしは駅のホームを歩く。

日常の暮らしのなか、屹立して残るような一瞬がある。
時の時、とでも言うべき瞬間だ。

祖父からすれば孫と手をつなぎ歩く秋の夕暮れなど、愛おしさで胸いっぱいになるようなひとときに違いない。

祖父の胸に生じている感慨について、少年の方はこれっぽちも感知できないであろうが、いつかこの先、その手のぬくもりをしみじみと思い出すこともあるだろう。

事務所で残業務を終え、クルマ走らせ帰宅する。

何かの冗談みたいに蒸し暑い夏日となった一日であったが、暦で言えば秋深まりゆく時節。
だから夕餉のシーンに、小鍋の湯豆腐がぴったりはまる。

お猪口で日本酒というのもいいが、夜に読みたい本を買ってあり、サンペレグリノを選ぶ。
微発泡のミネラルウォーターである。

静か湯豆腐を味わう。

まもなく霜月。
四季折々、いつだって魅力あふれる我が国日本であるが、そのなか最も良い季節がこの頃合いではないだろうか。

秋と結びつく風物詩が数々浮かんで、心弾む。
京都や奈良を気まま散策したのは去年の今時分のことだった。

無為に過ごすにには、あまりに勿体ない。
今年も、ぶらり。
行き先は京都と奈良で決まりだろう。

秋、その尽きせぬ魅力が最高潮となる。
古都が旅情を誘って止まない。