待ち合わせまで時間があったので本屋のなかをぶらついた。
見渡す限り本だらけ。
そこに記された文字の分量を思って気圧された。
ほぼすべての本と縁がない。
自身のちっぽけさと空っぽ具合を体感し、本屋のなか一人うやうやしいような気持ちになる。
このところやたら忙しくて、読書にまわす時間がほとんどない。
自分を通過する言葉が激減すると、僅か数ワードのみで内面が構成され、僅か数ワードだけで世界を解釈するようになる。
ふと漏れる独り言もバリエーションを失い、バカの一つ覚えのようなワンフレーズばかりとなっていく。
これはもう世界が縮んでしまっているも同然と言えるだろう。
意識の浅瀬にある小さな関心事のみに意識がとらわれ、足括られた家畜のようにそのまわりをぐるぐると回るだけの日々。
はい、おつかさん。
こんな状態で臨終を迎えるのだとしたらやり切れない。
まもなく年末。
休息が不可欠で本を手に取る必要があるだろう。
尻すぼみするには早すぎる。
弱化しはじめた言葉の眼力と脚力を取り戻し、生気を奪還しなければならない。