昼食を済ませリビングでくつろぐ彼ら面々は一人残らず全員が男前であった。
おまけに品もある。
よっと挨拶を済ませ空いた席に座りわたしも昼にする。
サザエご飯にお肉のスープ、そして特製里芋。
そこに長居して気を遣わせるような無粋なことはせず、さっさとその場を後にした。
家内を伴い街に出る。
冷気が肌に突き刺ささるような寒さであるが、歩いているうちなんとかなるだろう。
高木町にあるヒロコーヒーをまずは目的地に定めた。
案の定、日差しもあってほどなく温まってくる。
汗ばむ先から冷やされるので、いつまでたっても快適、ちょうどいい具合のウォーキングとなった。
さすがに人気店、日曜のヒロコーヒーは混み合っていた。
4組ほど順を待ってカウンターに案内された。
コーヒーが実に美味しい。
一口一口ゆっくり味わいながら家内の二万語に耳を傾けた。
店を出て高木町から門戸厄神そして西宮北口。
ただただ歩いて過ごす。
せっかくだから映画でもみようとなってガーデンズに寄る。
時刻は午後4時になろうとするところ。
オリエント急行殺人事件がちょうど始まる頃合いだった。
チケット購入画面を操作するが、あいにく隣り合った席がない。
離れて座る日曜を過ごすこともないだろう。
映画はあきらめ食材買って家で過ごすにした。
今夜のメニューはトマト鍋。
ガーデンズ下のスーパーで、海鮮の具を買い野菜を買った。
家に帰って手分けし夕飯の支度にかかる。
テレビで漫才が始まるころには準備整い家族で鍋を囲んだ。
わたしはこの夜は炭酸水。
どっさり用意されたタラ、イカ、タコ、エビ、カキはまるで水族館の餌みたいにあっという間に消えていった。
具があらかた出払ったところで、締めに家内がリゾットを作り始めた。
各種チーズを放り込み、とろけるリゾットを家族で分けるが至福の味わい。
大量のご飯が食べ尽くされることになった。
明日の朝はトマト鍋の出汁で作るパスタだというから楽しみだ。
デザートは、みかん。
つい先ごろ送られてきた箱入娘という銘柄なのだが、信じられないほど甘い。
冬の夜。
漫才見つつ家族でみかんを食べる図は幸福そのもの。
前夜未明、事務所で眠るわたしの携帯が鳴った。
上の息子からだった。
「どこ?」
「事務所」
時刻は午前3時18分。
互い一言ずつだけの手短な会話であったが心に沁みた。
家に親父の姿がない、一瞬であっても息子は心配したのだろう。
ほんとうに他愛のないやりとりが積み重なって家族が成り立っている。
われら小市民、何も大それたことなど望まない。
その元気な横顔に触れられるだけで十分満足。
幸せのハードルは思ったほど高くない。
そうしみじみ感じる日曜夜となった。