KORANIKATARU

子らに語る時々日記

なるほど、これが愛情

大掃除して疲れたというので外で食べようと誘うがそれも気が進まないという。

何か買って帰ろうかと水を向けると、家内は寿司がいいと言った。

 

上の息子に早速連絡を入れる。

昼に二人で寿司を食べたばかりであった。

夜も寿司になると食傷というものだろう。

 

が、繋がらない。

下の息子に様子を聞くと、家に遊びにきていた友人らと公園で走り回っているという。

息子を入れて9人。

結構な体格の高校生が熱く疾駆する様子が浮かんで微笑ましい。

 

この年末年始が終われば彼らにもう休みはない。

遊び納めが公園のグランドというのが体育会系の彼らに似つかわしい。

 

ようやく連絡がつき、上の息子に聞いた。

夕飯が寿司でもいいか?

 

寿司はいらない、皆とラーメンを食べてくる。

即答だった。

 

それで鮨屋で三人前の握りを注文し三人分の美味しいところを見繕ってもらった。

待つ間、Keaneの曲を流してわたしはジムで走った。

 

寿司は新鮮な方がいい。

帰途、わたしはクルマの窓を開け放った。

もちろん暖房も入れない。

 

寿司の鮮度を保ちたい。

その一心でわたしは43号線をひた走った。

 

道が空いていたのも手伝って半時間もせぬうち家に到着した。

 

寿司を囲んで白ワインを開けた。

いただきますと食べ始めたちょうどそのとき、上の息子が帰ってきた。

 

食卓に並ぶ艶やかな寿司を目にし、彼は言った。

あとでおれも食べるわ、残しといて。

 

話が違う。

いらないと言ったではないか。

残す分など一貫もない。

 

わたしはそう言った。

下の息子もわたしの意見に賛成だった。

 

ところが、家内は違った。

自分の分を長男にあげると言い出した。

 

わたしとしては納得がいかない。

家内が食べたいと言ったから買って来たのであり、少しでも美味しく食べてもらえるようわたしはクルマを飛ばしたのだった。

しかも、長男は昼に寿司を食べているし、友人らと夕飯も済ませている。

 

わたしはそう主張し、長男もじゃあいいよと快く辞退を申し出た。

 

が、家内は譲らないのだった。

自分の分には箸をつけず、あとで長男が食べられるように取り分けた。

三人前以外に頼んであった幾つかの握りを味見程度に食べ、わたしと二男の分を少しつまんだけで、もうお腹いっぱいと言った。

 

やはり家内は母なのだった。

「母さんはお腹一杯だから、ほらもっと食べなさい」

そう言って自分の分まで子に差し出す心優しい母は実在するのだった。

 

まもなく新年。

母と子にまつわる新たな逸話がここを舞台に幾つも誕生することになるのだろう。

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Werner StuhlerHouse Between Rocks, 1963.