時刻は夜8時。
仕事する余力はまだあるが、脳が酸欠気味でやや朦朧、複雑なことをグリップする握力が失われかけている。
こんなとき無理して進めば、仕事がボロボロになっていく。
修復に余計な手間かかるだけのことであるから、手を休めた。
携帯に目をやるとメッセージが届いている。
長男からだ。
夜はチャーハンがいい。
10時前に帰る。
簡潔明瞭な2行を目にし、終業とすることにした。
電車を使って家路につく。
駅を降り、まずは和みに向かう。
餃子が美味しくチャーハンの持ち帰りもできる。
が、時すでにおそし。
閉店は8:30。
時刻は8:33。
気を取り直し、同じ通りにある甲子園飯店に足を向けた。
品揃え多く美味しく、地元人気店のひとつである。
メニューを見て息子の気持ちになりかわる。
ひとりでに口をつく。
エビチャーハン大盛り、餃子三人前、それに酢豚とチャーシュー。
これでしめて3千円。
夜食にしては多目かとも思ったが残れば晩酌のあてにすればいい。
昼と夕の食事代として千円渡してあった。
足せば結構、値が嵩む。
大食漢が家にいるというのは、まさにトラやライオンを飼っているようなものである。
GooglePhotoをのぞけばなんという偶然、二男も彼の地で中華料理を満喫したばかりであった。
トラとライオンの世話に勤しむ家内に脱帽するような気持ちになる。
たまに餌付けはできても連日続くと敵わない。
帰宅し風呂を沸かす。
待つ間、料理を皿に移し替えテーブルに並べる。
風呂をあがると息子が帰宅した。
前夜に続き彼が食べる様子を眺めつつビールを飲む。
チャーシューをほんの少しつまみ酢豚をちょいとつつく。
数口食べ、「美味しい」と彼は言った。
ほんま美味しい、ありがとう。
そう繰り返してがつがつ食べるものだから、駅を降りわざわざ足を運んだ甲斐もあったというものである。
一体これまでどれだけ食べさせてきたのだろう。
食べた分量積み上げれば怪獣一体分くらいの嵩になるはずだ。
そう思えば難業であるが補って余りある喜び伴うから、こちらも怪獣一体分以上楽しませてもらっていると言える。
子を授かって怪獣一体分の感情体験。
生まれた当初は3千グラム。
やはりどうやら、こんな面白い話はない。