ジムを終えて家に帰る。
道すがら家内に頼まれた手打ちうどんを忘れない。
今夜夕飯はとり鍋。
しばらくぶりに食卓に湯気が戻った。
野菜がたっぷり入って出汁がまろやか香ばしく豆腐から何からすべてが美味しい。
赤白黒と揃った色とりどりのビールも順々に空いていく。
シメはうどんで二男はうどんだけでなくラーメンも平らげた。
夏休みに観る映画のおすすめ処を二男に頼まれネットで10本選びつつ、今朝観たばかりの映画『15時17分、パリ行き』について話す。
いまや巨匠となったクリント・イーストウッドの新作である。
実際にあったテロ未遂事件がテーマとなっている。
出だしは、アムステルダムからパリに向かう列車にテロリストと思しき人物が乗り込む場面。
以降、犯人を組み伏せることになる若者3人の生い立ちに焦点があたる。
時折、過去と現在が行き来して当の列車内の様子が折り混ざる。
そのたび彼ら3人が導かれていく一点について想起することになる。
少年の頃から3人が3人とも学業不振で学校生活に馴染めなかった。
学校から爪弾きにされる3人はいつしか一蓮托生の仲となり彼らの間には厚い友情が育っていった。
教師に眉ひそめられる存在ではあっても、母の愛が揺らぐことはなかった。
学校から謗られる彼らを見守る母の眼差しは終始一貫どこまでも優しく温かい。
若者をとりまく世界は世知辛く、願いが叶うことは稀である。
適性という物差しでその都度ふるいにかけられ失望の憂き目と無縁ではいられない。
それでも彼らのなか備わっていた善良な何かは真っ直ぐに育っていった。
学校では問題児として冷淡にあしらわれる存在であったが、彼らには果たすべき尊い使命があり、無意識裡に彼らはそこへと導かれていたのだった。
テロ発生の現場へと収斂していく映像の流れが背景に潜んでいた必然をくっきりと浮かび上がらせる。
15時17分パリ行きの列車。
彼らが敢然とテロリストに立ち向かわなかったら数百人規模の犠牲者が出ていてもおかしくなかった。
ラストシーンはフランス政府からの勲章授与のシーン。
彼らを見守る母らの優しく温かな眼差しが強く印象に残った。