緊急事態を知らせるメールだった。
腹が減った、お金はない。
対応したのは家内だった。
時刻は午後4時。
よく冷えたお茶を携え、長男がいる西宮北口へとクルマを走らせた。
途中、やまがき畜産に電話し、作りたての和牛弁当1つを注文した。
クルマを停め長男の大好物であるピオーネを買ってその足で二階へとあがりスタバでアイスコーヒーも調達した。
待ち合わせ場所はアクタ階上のベンチ。
駆けつけるとすでに長男の姿があった。
差し入れを受け取るや彼はがつがつと食べ始めた。
その様子を家内は眺めてお茶を淹れる。
遠目から捉えれば、その母子の姿は訳ありの図に見えたことだろう。
やむにやまれぬ事情があって、こっそり母は実子に食事を運ぶ。
たとえばそんな想像が掻き立てられて憶測が憶測を呼んでいく。
お腹が落ち着くと、いつになく饒舌に長男は話し始めた。
聞き役となって小一時間。
気も済んで長男は持ち場へと戻り、その姿を見届けてから家内は買い物するため階下に降りた。
ちょうどその頃、わたしは帰途にあり家内からの指示を受けた。
スイカと刺身。
どちらも長男が希望する品であった。
進路を変更しわたしは市場近くの魚屋に寄った。
見るからにうまそうなタイとカンパチの分厚い切り身それにタコを買い、前日同様、果物屋でスイカを抱えた。
このようにいつまで経っても暮らしの中心は子が占める。
だから当然、帰宅しての夫婦の話題は今夜も子の話に尽きることになる。
それが楽しい。