KORANIKATARU

子らに語る時々日記

長い目でみればこの一択

この日夕刻、下の息子が帰ってくる。

6泊7日に及んだ黒姫合宿は待つ方にとっても長かったが、現地で指折り数える側にとっては更に長く感じられるものだっただろう。

 

夜は二男の求めに応じて外食。

その心づもりでわたしは動いていた。

 

グーパスの通知で二男が学校を出たタイミングを見計らい、外食先の希望を彼に聞いた。

その答えは「家でゆっくり食事したい」であった。

 

長距離をバスに揺られて学校に到着し、そこからようやく家路についた二男にはもはや外出しようとの元気は残っていないようだった。

 

たった一日、タングラム斑尾での自由行動があっただけであとは勉強漬け。

疲れているのは充実の合宿であった証拠、そう捉えていいのだろう。

 

そのときわたしは阿倍野で業務を終えたところだった。

二男を連れての外食はなくなり他に用事は何もない。

となれば、足はおのずと正宗屋に吸い寄せられることになる。

 

カウンターに腰掛けて、道中で思い描いたとおりにわたしは注文していった。

イイダコ煮とカツオのたたきを皮切りに、鯛とタコの刺身を頼んで、カワ、キモ、ナンコツといった焼鳥定番で箸を休めて、そしてラストはゲソ焼きとイイダコ煮のイカ・タコ共演。

 

ちょうどいま、二男は家内の手厚い歓待を受けていることだろう。

テーブルには所狭しと家内が腕によりをかけた料理が並べられているに違いない。

 

案の定、チーズたっぷりデミグラスソースで食べるオムレツや、こんがり焼けた大ぶりのステーキ、鉢に入った巨大サラダ、スイカにブドウといったフルーツ類などに向き合う二男の写真が家内から送られてきた。

 

キリンビールを飲みつつ写真を眺め、この日届いた各種メールを読み返す。

同窓会報の手伝いをしているので、このところ星光関係のメールが目立って多い。

 

はじめてやりとりする大先輩も少なくないが、印象に残るのはどなたも優しく親切であること。

関われば関わるほど、この穏やかな空気感こそ大阪星光最大の持ち味だとの確信が強まっていく。

 

大阪を代表する進学校でありながら進学指導一辺倒になりきれない浪速ほんわか的な緩さ加減と学校に底流するキリスト教的博愛精神が人間教育の源泉となって、このような雰囲気が醸造されるのだろう。

 

その証拠、皆さん優秀な方ばかりであっても集って話したときに、大学はどこだとか、席次は何位だったとか、他所の学校では聞こえてくるような張り合う雰囲気の話題がほとんどなく、進学先や職業で誰かを上下に見るような分け隔て感も全くない。

 

つまり、この学校の良さは目先のことでは語れない。

在学中から始まって、継続的にいまもここから何かが始まっていく。

長い時間かけてじんわり沁みる、そんな類の話であるから大人になってからの方が味わい深いと言えるだろう。

 

来月9月に行われる33期の卒後30周年同窓会では担任の先生が勢揃いし皆が一堂に会する。

当時の一場面が断片的ながら再現されることになる。

 

まるで夏休みが終わった後に再会するみたいに、やあ久しぶりと「ひと夏」の出来事を語り合い、そして、まるで放課後に遊ぶ約束するみたいに折々頻繁にまた顔を合わせることになる。

 

大阪星光という場を通じて響く相互作用の長尺は、これはもう相当なものである。

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