夜の11時、帰宅した長男のリクエストに応え家内は肉を焼き始めた。
夜食の支度に取り掛かった9時半から家内はずっとキッチンでご飯を作っていることになる。
10時過ぎに既に夜食を済ませていた二男も肉は別腹だと食卓につき再参戦した。
食べる量がそのまま日々の活動量を物語る。
だからその食欲の壮烈が微笑ましい。
食べ盛りであるこの年代でもし万が一、食が細ければ心もとないこと甚だしい。
じっとうずくまって過ごすのでない限り腹が減って仕方なく、どれだけ食べてもまだ腹に入る。
それが十代男子のノーマルな姿であろう。
仕事を通じ誰の笑顔を一番見たいか。
入社試験の面接で必ずそう問いかける事業主がいる。
同僚やお客さん。
そういった回答が一番多い。
事業主はさらに問う。
もっと突き詰めて考えて、ほんとうにその笑顔を見たいと思う人は誰か。
事業主が求める解にたどり着く人は少ないが、なかにはご明答というケースもある。
答えは、母親。
母親の笑顔を見たい。
そう答える人間は、きちんと愛情注がれて育ってきたはずで、母の献身が理解でき、それを素直に感謝するという良い心根が備わっているとみて間違いない。
一緒に働くなら、そんな感性をベースに持つ者が好ましい。
実に的を射た話だとわたしは思う。
産んで育てて、何にも増して無私の愛情を注いでくれたその存在を抜きにして、一体なんの喜びがあるだろう。
息子らは、いつか母に恩返しすることになる。
そのとき家内の笑顔はもっと巨大なものになることだろう。