大人になっても一生勉強。
できそこないのわたしでさえ、たまには一人こもって机に向かう。
師走最初の日曜日、家内はママ友と約束があるという。
下の息子は塾に出かけ、上の息子は先ごろから使い始めたおとな自習室で終日過ごす。
わたしに用のある者は見当たらない。
これを勉強日和と言わずとしてなんと言おう。
読まねばならぬ資料があって、積んでそのままとなった書籍が山ほどもあった。
吹けば飛ぶよな自営の書類屋。
頼りになるのは血肉とした知識だけであり、それを使った芸だけが先々に渡って身を助く。
そして、こんな過ごし方が性に合う。
はるか昔にそうと気づけば、少しはマシな男になれたかもしれないが、勉強を始めるのに遅すぎるということはなく、思い立ったが吉日、これでいいのだと自らを慰めて、紙束のうえにペンを走らせる。
早朝からそのように過ごしてちょうど昼時、家内から連絡があり駅に向かった。
海老江の改札、11:32。
家内特製のカレー弁当を受け取って、そこから地下鉄野田阪神の駅まで地下道を伝って百メートルほど。
その区間、家内と一緒に歩いて、海老江の駅で迎えた家内を野田阪神の駅で見送った。
たった百メートルの散歩デートを終えて、またわたしは机に向かう。
ながらで食べるカレーが実に美味しく、「なんでこんなにうまいの?」とわたしは家内にメールを送った。
気づけばあっという間に時が過ぎ、街は薄暮の色を呈し始めていた。
この日、M-1漫才グランプリが行われる。
ぼやぼやしてはいられない。
さっさと帰り支度を整えて、わたしは事務所を引き上げた。
まるで示し合わせたみたいであった。
M-1が始まる18:30を前に、リビングにわたしと家内と二男が顔を揃えた。
もちろん長男はまだ笑っている場合ではないので、ここにはいない。
前菜はハムのサラダと春巻、メインは豚しゃぶ。
家族で鍋を囲んで、宴のはじまりを今や遅しと待ち構えた。
世の中にはなんて面白い人たちがいるのだろう。
わたしたちは何度も大笑いし腹を抱え、互い笑った顔を見つめ合って、それがおかしく更に笑うことになった。
リビングに大輪の笑いが咲き乱れ、わたしたちはお笑い芸人に対するリスペクトの念を一層深めた。
だから、次回の企画は、よしもと漫才劇場で笑い転げて、その足でかに道楽。
そう満場一致で可決確定した。
楽しい予定は希望の灯火。
思い出し笑いをこらえつつ指折り数え、わたしたちはその日の到来を心待ちにする。