KORANIKATARU

子らに語る時々日記

ヤドカリの引っ越しのようなもの

昼を過ぎ急にそわそわし始めたので、予定よりも早く出発することにした。

事務所を出て駅前でタクシーを拾った。

 

ふたりとも意を決するような思いで固くなっていたからだろう。

並んで座って全く言葉をかわさず、タクシーのなか沈黙のまま過ごした。

 

新大阪駅に着き家内と合流した。

祝日のコンコースは混み合っていて何を買うにしても列に並ばねならなかった。

 

道中に食べる牛タン弁当とフルーツサンドを買い、飲み物にフルーツジュースを買う。

それでも早く着きすぎたものだから時間が余った。

 

新幹線26番ホームのベンチに3人横並びで腰掛け、これまた無言でしばし過ごすことになった。

 

いま思えば、この沈黙も一つのコミュニケーションであった。

各自の思いが活発に行き来し、その思いを皆がありありと理解できた。

 

出発10分前、大阪を始発とする新幹線のぞみ号がホームに入ってきた。

座席に座ったことを確認し、新幹線が動き出すまでその姿に視線を送った。

 

ヤドカリが古い貝殻を捨て、新しい住処とする貝殻を争奪するようなもの。

ふと、そんなイメージが浮かんだ。

 

行って帰ってきたときには一回り大きくなって、それに相応しい住処を引っ提げて来るのだろう。

そう思うといよいよ緊張高まり、頭がのぼせて全身がしびれた。

f:id:KORANIKATARUTOKIDOKI:20190222134732j:plain

2019年2月11日午後2時半 新大阪