KORANIKATARU

子らに語る時々日記

母は母でありすべては母があってこそ

ジムを終え風呂もあがっての電車での帰途、ランダムに流す音楽が映画「ロシア・ハウス」のテーマ曲Katyaになった。

 

みそぎを終えた後同様、心身内部の不浄がミニマムの状態であったからいつにも増して音が深く深く沁み入った。

 

車内の誰かと目が合うが、こちらは忘我であって外界のことなど眼中になく、目の焦点は遠く「ロシア・ハウス」のシーンに結ばれていた。

 

リピート再生にしその旋律にだけ心預けて道中を過ごす。

深い愛情のようなもの、誰かを守ろうとする強い意志のようなものが静かふつふつ湧いて出てくるから、自然、この曲はいいよと同志である長男に送って、これまた同志である二男にも送ることになった。

 

知ってる。

二男から即座に返信があった。

 

それもそのはず。

iPhoneで共有している音楽であり子らが小さいときからクルマのなか何度も流してきた。

耳に馴染んでいて当然であった。

 

家に帰ると家内は留守だった。

これまたそれもそのはず。

今夜は会食の予定があって遅くなる、そう伝えていた。

 

その予定がキャンセルになった。

家内に言えば負担になるかもしれない。

それで何も言わずに帰宅したのだった。

 

何か食べるものをと冷蔵庫のなかなど物色するが、あいにく何も見当たらず、駅前にでも出ようかと思案していたところ、先ほどメールでやりとりしていた二男が帰ってきた。

 

彼もわたし同様。

予定が変更になっての早い帰宅だった。

何か食べに行こうかと水を向けると、自分で作ると彼は言った。

 

すぐさまキッチンに立ち、制服のセーターのそでをたくしあげ、彼は夕飯の支度をはじめた。

家内に仕込まれているから手際がいい。

 

まもなくわたし用の明太子パスタができあがった。

ほら、といった感じで息子が差し出すのをカウンター越し受け取って、一口食べて驚いた。

かなり、うまい。

 

彼は彼でアボガドを潰してチーズとハムをのせ自分好みのフレイバーに仕上げ、父子で向かい合ってパスタを食す夕飯となった。

 

幼い頃の姿が思い浮かんで隔世の感。

当時の様子からすれば、料理するなど奇跡と言えた。

 

アホ丸出しでそれに輪をかけ兄貴はサル同然であり、下町風情のうちの身内はそれを可愛がったにしても、家内の方では特に上品っぽくみせてそれが命といったスノビッシュな感じの方々からは、眉をひそめられバカじゃないかと目を点にされ医者に診てもらった方がいいのではと呆れられ小汚くて疎まれ兄弟揃って露骨な感じで卑下され冷たくあしらわれた。

 

それでも母は母であり、やはりすべては母があったればこそ。

そんなアホ面二人に家内は愛情注いで、我が身など二の次といった献身ぶりであったから、そのおかげ、アホ兄弟二匹は人に属するレベルに至ることができたのだろう。

 

やれやれ一安心。

 

パスタがよき前菜となって、まもなく家内がスパから戻り、さすが料理のプロ。

瞬く間に魚を焼いて鳥のささ身を味付けし、お酒のつまみを取り揃えてくれた。

 

このように、愛情と献身が隠しきれぬほどの隠し味となって、ささやか人としての暮らしが成り立っている。

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2019年3月20日昼 上本町和光菴