KORANIKATARU

子らに語る時々日記

絵に誘われるようにして話が決まった

豆腐からはじまり、山菜とホタテの炒めもの、そしてレタスとトマトがたっぷり入ったサラダ。

続いて、フランス土産のふんわりとろとろチーズを賞味しつつ白ワインを飲む。

 

その間ずっと、家内がスクロールしてくれる彼の地の写真を見続けた。

 

モネが住んでいたジヴェルニー、ゴッホの墓があるオーヴェール・ シュール・オワーズ、オランジュリー美術館からオルセー美術館そしてゴッホ美術館へと延々美しい写真が続く。

 

優雅な食事となって、眼もほんのうっすらアート系になっていたからか、朝日新聞の夕刊に連載されている「美の履歴書」に目が留まり、モイズ・キスリングの『サントロペでの昼寝』という色鮮やかで美しい絵にしばし夫婦で見入った。

 

松本紗知さんの書く解説が名文で、こうあった。

 

『この絵には、視線を面で誘導する仕掛けがある。

手間の床に落ちる木の葉の影は、画家の白いシャツ、中央のテーブルにも同様に浮かび上がっている。

また、ズボンの青、ドレスの赤と同じ色調が背景にも使われ、鑑賞者の視線を奥へと誘う』。

 

我ら下々の夫婦、もとより鑑賞眼など無きに等しく、絵に込められた奥深い意図など汲めるはずもないが、そこに描かれたキスリングとルネ二人がこの絵の後、夫婦となり生涯添い遂げたと文章が結ばれていれば、『画面を包む幸福感』をじんわり感じ取ることができ、いい絵なのだと理解が及んだ。

 

食後、家内の友人に送る土産を小箱に入れ、大ぶりの箱には長男への品を詰め隙間にわたしは本を挟んで思い立った。

 

あ、そうそう、

キスリング展 「エコール・ド・パリの夢」は東京都庭園美術館で7月7日まで行われている。

 

4月に東京を訪れてから随分と時間が経った。

坊主の様子でものぞきに近々東京に行こう。

まるで絵に誘われるようにしてそのように話が決まった。

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Moïse Kisling, La Sieste à Saint-Tropez (Kisling avec Renée), 1916.