行楽の11月。
皮切りは京丹波から。
そこで近畿大会が開催される。
うまく行けば三連休すべて通うことになる。
朝八時半に出発。
途中まで快調であったが、名神上りは京滋バイパスへとつながる左ルートがたいへんな混みようだった。
左ルートへ行けというナビの指示を無視し空いている右ルートに入って京都南で一旦高速を降り、インター周辺をぐるりまわって、下り方面に入り直し京丹波を目指した。
多少遠回りとなって高速代も嵩んだものの、渋滞を回避でき、結果、時間も節約できた。
みずほインターで降り、遠出した場合の定石どおり道の駅に向かった。
まずは腹ごしらえ。
わたしは特製天ざる、家内は名産きのこ丼を注文した。
そして食材の買い出し。
野菜果物牛乳卵調味料そして新米10kgを買い込んだ。
もちろんクルマに保冷セットが常備してあるので観戦中も食材が傷む心配はなかった。
グランド脇の駐車場にクルマを停め、アップする星のしるべ選手団の様子を眺めてしばし過ごした。
午後1時試合開始。
対するは箕島高校。
和歌山一位のチームである。
秋の濃く深い緑の山野を背景に、発色鮮やかきらびやかな銀杏の木々が目に眩しい。
そんな景色をバックに縦横に走る選手らの姿を見守るが、格別の眺めと言えた。
家内は一眼レフで息子の姿を追い、わたしはiPhoneで追い、スタンドに詰めかけた父兄らは各自それぞれカメラを携え我が子の姿を目で追った。
こんな幸せなことはない。
息子がいっぱしの男子となって、秋の青空のもと真剣勝負の場でしのぎを削る。
そんな姿を見せてくれるだけで親孝行を十分に果たしたと言っていいだろう。
もし息子が家でごろごろしているような男であれば、夫婦ともども陰々滅々な日々を余儀なくされたに違いない。
個々の能力では星光が箕島を上回っていた。
ボクシングのように勝負を判定で決着つけるなら見ていた全員が星光に軍配をあげたことだろう。
が、序盤、相手の気迫が勝って、星光は受けに回ってしまった。
相手のロングパスがことごとく決まって、その一方、星光チームは自陣でボールを回すといった悠長なことをしていたから、エリアを何度も制覇されピンチが続いた。
そんな流れでセットプレーから失った1点が最後まで尾を引いた。
以降、エース7番を筆頭に何度も相手ゴールに迫るが必死の守備を崩すことができなかった。
だから試合後、選手全員がうなだれ動けず多くが涙した。
結果は受け入れがたいものであり、悔しさを全員が共有していた。
しかしこれもまた貴重な学びであろう。
秋の収穫無限大と言える敗戦であり、いつか彼らが傑物へと化けていくための特効的な良薬として作用することは間違いなく、だから、苦いからこそありがたい話であった。
バスの前で肩を落とし言葉なく座り込む選手らを見送って、わたしたちは帰途についた。
尼崎インターで高速を降り、日常が舞い戻った。
長男のために家内が買ったセーターを送るため西宮のゆうゆう窓口に寄り、二男に肉を食べさせようとアクタの山垣畜産に向かった。
いつだって子が中心。
寒さ堪えて編んでます、といった演歌レベルで家内は子に尽くす母なのだった。
息子の試合観戦の後は、ラグビーワールドカップ決勝戦。
先日、神戸ベイシェラトンで見かけた選手全員が活躍し、会心の勝利を得た。
同じビュッフェで食事し、写真を一緒に撮ってもらっただけなのに、彼らに飯を食わせた食堂の女将といった風に家内は喜んだ。
南アフリカの選手らだって悔しさをバネにした。
息子ら星光選手らにも弾力あるいいバネが内蔵されたも同然であるから、今日はほんとうにめでたい日であったと結論づけていいだろう。