1
明け方、家内をリムジンバス乗り場まで送る。
当分これで我が家は男子水入らず、政権空白の晴天の数日を迎えることになる。
お祭り気分となるのは何故だろう。
今日、関西は中学入試解禁日であった。
昨年の今頃は長男が受験の当事者であった。
本当にそのようなことがあったのか、遠い昔のことのような気がしてならない。
おそらく、正気ではなかったのだろう。
家内が言った。
記憶がところどころ、飛んでいる。
2
二男は塾の先輩受験生の応援にでかけた。
本番当日の臨場感を目の当たりにし肌で多くを学び取るだろう。
二男から電話があった。
応援を終えてこれからα模試の会場に向かうと言う。
興奮気味である。
本番の空気に包まれたまま模試を受けるようだ。
五年生を鼓舞し当事者化するシミュレーション・プログラムとして絶好のやり方ではないだろうか。
3
年末にMacOSをアップデートし、細々使い勝手が向上したがプリントアウトができなくなった。
小さな改善益と大きな不都合、はかりにかけるまでもない。
全体で見れば一体何をやっているのだ、という話である。
コピー機代理店の専門スタッフの力を借りてようやく本日復旧をみた。
病が癒えたような安堵を感じる。
コピー機との連結のため固定設定したIPアドレスを知らず変更していたことが原因であった。
素人であっても洞察力あれば自力で気づけるレベルのトラブルシューティングである。
面目ない。
Macで出力できない間、もっぱらWindowsを使った。
電子申請がうまくいかず、無益な時間をどれだけ過ごしたことだろう。
Internet Explorer10 へと自動でアップデートされていたことが原因であった。
役所のシステムはInternet Explorer9までしか対応していないのだ。
便利もへったくれもない、何とも不条理な話である。
書類の束をもって役所へ駆け込めればどれだけ楽であったことだろう。
パソコンを前に憔悴の時間を過ごす不毛に並ぶものはない。
私が知る狭い日常の向こう側には、システム自体が発生因となるトラブルも多々あるのだろう。
融通利かないにも程がある。
こんなカタブツに世界の統御を任せて大丈夫なのだろうか。
4
最新であるからと疑いもなく頼りにしていたInternet Explorer10が不具合の張本人であった。
いくら頑張ったところで、それを頼みとしたままでは、らち開くはずもない。
「あんたが、犯人だったのか」
人交われば、更にこのような事例に事欠かない。
不首尾発生のずっと後、構成メンバーのうち意外な人物が、よほど頼りにしていたあの人物が、問題を慢性化させる根本因であったのだと気付かされるケースは少なくない。
この世はそこら出来合いのミステリーよりも遥かに謎めいている。
5
青年ならふと好きな女子の名でも漏らすような空白の一瞬、例えば見上げた空に煌々輝く宵の明星などを見つけたときや、湯船につかり安堵の吐息がこぼれるようなとき、練達の仕事人はその犯人または張本人にはたと思い当たる。
すべてがそれで説明がつく。
そうに違いない。
しかし、説明は容易ではない。
時に説明が無為となるケースもある。
あまりに根本的すぎる場合には、解決するより、サイドブレーキ引いたままクルマ走らせるように、それを引き摺ったままの方が皆が受け入れやすいという場合があるからである。
何でも解決すればいいってものではない。
この世は更に謎めいていく。