KORANIKATARU

子らに語る時々日記

鼻は通るが仕事が詰まる


起き抜けには仕事のことを考えてはならない。
特に月曜の朝であれば尚更。
ホカホカ陽気色ににじんだままの休日の残像振り払い、容赦なく吹き荒れる仕事暴風雨のなか、スムーズに入っていけるものではない。

心の焦点を美味しいコーヒーにだけ合わせる。
仕事など物音すら寄せ付けてはならない。

セブン-イレブンであろうがファミリーマートであろうが、いまや到るところ、たったの150円で美味しいコーヒーにありつける。
コーヒー一杯190円でオープンした横丁のカフェの開店を待つ必要もない。

ハンドルを握りクルマを走らせる。
コーヒーの香りを思い浮かべる。
そうこうしているうちに、だんだんと態勢が整ってくる。

さんざめくような休日の残響を背後にし振り返ることもなく、仕事の暗がりに真っ直ぐ進む。


六年生ともなると公開テストは真剣勝負そのものだ。
無事試験を終えた二男と待ち合わせ、地元の串かつ屋串笑門へ向かう。
先日西宮バルで食べて美味しく、是非とも子に食べさせようと思ったのであった。

店に入ると大学生のアルバイト君に言われる。
「同じ腕時計ですね」
大学生と同じ時計をしている四十過ぎの中年男子。

どうやら私はオシャレの最先端にいるようだ。

「走り勝つ」がテーマとなったラグビーの練習で、長男は朝から夕まで走り通し、家で臥せって動けないという。
家内から練習の様子を聞く。
本気度全開、熱風オーラほとばしらせる超肉体派中学生が、がっちんがっちん音立ててぶつかり合い、もつれあったまま何もかもひきずって辺り構わず走り回る。

学校と野球、それにラグビー、全部が全部、ハードさを増していく。
わらじ3つを履きこなすのはどうやら困難なようだ。
なんちゃってラグビーの世界に戻るべきなのだろう。
そして、それでも十分、胸を張っていい。


長男の学校の友人らが方方から集まり、家内が手料理を振る舞い、そこに二男も混ざって、あれこれ輪が広がっていく。
取り組むことは各々ハードであっても、それぞれの方向に走る友達ら皆が伴走者だと考えれば、孤独も和らぐ。

バカやりながら、そのような交流の基礎が、日々強固に形成されていく。
一人一人の顔がそれぞれの胸に深く刻まれ、いま遊ぶ友人の誰一人として、この先もずっと忘れられることがない。
それくらいになるように、遊ぶときは思いっきり遊べばいいのである。


花粉は大量に飛んでいるのであろうが、わしお耳鼻咽喉科で1月下旬にレーザー処置したお陰、今季においてもクスリは「一粒」たりとも必要となっていない。
もちろん、多少クシャミは出るし、鼻水もちょろり出る。

しかし、それが何であろう。
私にとっては、鼻さえ詰まらなければ僥倖、全部OKである。

鼻詰まりの頭重感と口呼吸の息苦しさに悩まされたあの苦しい花粉症の日々を思い返し、それがない幸福をしみじみ味わう。
そのうち、鼻詰まりからの解放が当たり前のこととなって、春先の鼻呼吸の有り難ささえ意識しなくなるのだろう。


ちょっと待ち時間が生じて、日記を書いた。
このところ、手が空いたら日記を書こうと、そのまま日が暮れ、一日が終わるというほどに忙しさが慢性化してしまっている。

鼻の通りはいいが、仕事が詰まっている。
喜ばしいことであろう。