KORANIKATARU

子らに語る時々日記

金持ち御三家と理想の嫁1

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土曜朝5時、事務所に向かおうとクルマに乗る。
ガソリンが空である。
点滅する給油ランプにヒヤヒヤしつつセルフスタンドに駆け込む。

まるでトイレに駆け込むみたいな焦り方であったと人心地ついて給油しているとき、ポケットにもう一方のクルマのキーまで入っていることに気づいた。

このままだと家内がクルマを使えない。
キーを戻すため家まで引き返さなければならない。

家に戻るとちょうど長男が起きだしたところであった。
雨なので早朝の自主トレは控え直接ラグビーの練習場に向かうと言うのでクルマで送ることにした。

ラグビーのお見送りをするのは久方ぶりであった。

本日の練習場となる鳴尾高校に到着するとすでに大勢の選手がアップを始めていた。
小雨もちょうど止んだ。
日差しやんわり雲間に隠れハードな練習には格好の薄曇り。
炎天下にさらされる晴天よりはるかに好ましい。

長男を送り出し、その背中をしばらく見続けた。


男子持つ母らが集えば勉強から学校からスポーツの話になって、やがて将来の嫁の話になる。

子が長じて嫁をもらったときにそれがろくでなしであれば一大事。
今から案じて、ああでもないこうでもないと良き嫁もらうための空想的な論談が展開される。

女子力など笑止千万。
そんなもの戦略的に磨かれても気味が悪い。
美貌もスタイルも、無用の長物。
それで世間の荒波渡れるものでもない。
お花畑さまよう蝶よ花よはおとといおいで。

将来の姑たちが結論した。
理想の嫁は、アニマル京子。

女子レスラーなら間違いない。
心身頑健で礼節備わった歴戦の強者。
絵空事の幻想に毒されておらず正気保っている。
これで愛嬌もあれば言うことなしだ。

息子の嫁にはアニマル京子。
鬼に金棒、アニマル京子。


先日、労基署で用事していた。
隣のブースで何やら込み入ったやりとりがなされている。
会社の総務関係者であろうか大柄な女性ばかり3人が担当官に何やら教え諭されている。

一人、際立って大柄な女性がカウンターに両腕をのせ前屈みの姿勢で座っている。
その女性が座り直して椅子に背をもたせかけたとき、隣の隣のブースの女性の姿がこちらの目に入った。

まるで発光しているのかと言うほどに、目をひく美人がそこにあった。
見蕩れていると、大柄の女性がまたもや前屈みになり、光は閉ざされた。

ああ邪魔だ、大柄がいなくなればいいのにと舌打ちしつつ、ちらちら視線やってしまい、その大柄と目が合う。
殺気立ったようにその目が怒っている。
見せもんじゃねえよ、とその目はこちらを威圧しているのであろうが、こっちはあんたが見たいのではない。

しばらくして、大柄がまた椅子にもたれた。
光がのぞき見える。
同じカテゴリーで括られる生物だとは到底思えない。

しかしそれで見納めとなった。
光の美人は用事を終え立ち去ってしまった。

殺風景な景色のなか、ビッグ・スリーだけが残された。


レスラーっぽい、だけでは足りない。
アニマル京子的な可愛らしさと素直そうな性格の方こそ肝心要。
そのような心根の素のようなものがあって、それが鍛え上げられてこそ、「強固な金棒」と見込むことができる。

そしてまた光放てばいいってものでもない。
とかく男子は光に惑わされ目が眩むが、その光を差し引いて、強固なのかどうか見定めて必ず京子の方を選ばなければならないだろう。

両方あればいうことなしだと思うかもしれないが、なかなか両立するものではないと知っておいた方がいい。