明石で業務を終えた後は、海を眺めて帰阪することになる。 業務中は自身が仕事人間に置き換わっている。 汽車に揺られ、ほどなくして我に返って思い出す。 が、この現実が呑み込めない。 そもそも生まれ落ちたときから存在し、以降、その存在が当然の前提だ…
視界に入る景色によって、意識を向ける対象がランダムに入れ替わる。 駅へと足を運ぶ人波、携帯の着信、遠くに見える山並み、そして心の内奥。 サーチライトに照らされるように様々なものに焦点が結ばれ、移ろっていく。 遠い昔の記憶が眼前に浮かぶと、しば…
空に晴れ間が見えたのは久方ぶりのことだった。 初夏の陽気に誘われ、朝、武庫川に向かった。 陽が強く照りつけ、気温がぐんぐん上がっていった。 生気あふれる光のなかをただ黙念とわたしは走った。 このようにして一日が始まり、そして午後3時。 昼に帰阪…
深い考えもなく理系に進んだのが運の尽き。 大学に入って適性のなさという壁にぶち当たった。 そもそも関心が持てない。 無味乾燥な内容をいやいや咀嚼する日々は苦行という他なかった。 なぜこんな過ちが生じたのか。 理由は簡単で、なまじっか理数ができた…
おいしいものを食べると涙腺が緩む。 この日、家内が作ってくれた辛味のスープが絶品だった。 卵と各種野菜が投入されて辛さがほどよく和らいで、肉とタコが食べごたえを生み、一匙すくうごとふんだんな滋味が身中に取り込まれていくのが分かって、その度に…
いまの時期にしては肌寒く、梅雨に入ったにしてもここまで間断なく振り続ける雨については記憶がない。 だからこそ家のなかの平穏が際立った。 食卓の上にはビールが並ぶ。 が、わたしは微動だにせずペリエを飲み続けた。 家族でする話題は、東京星光会につ…
いつでもハンドルを握ることができる。 それが、お酒を飲まないことによるメリットのひとつ。 「ドクターきょうのぼちぼちブログ」にそんなことが書いてあったことを思い出しつつ、深夜の高速をひた走った。 行って帰って明け方。 普段はもう起きて仕事して…
午前の業務を終え実家に立ち寄った。 用事を手短かに済ませた帰り、ふと思い立って鶴橋駅で途中下車しアジヨシの冷麺を昼食にした。 小さかった頃、たまにおかんが冷麺を買ってきてくれた。 そんなことを思い出しながら冷麺と向き合い、その美味を噛み締めた…
夜半から激しい雨が振り続けた月曜の朝、名神高速では事故渋滞、JR神戸線では人身事故が発生し、阪神間の朝の足は大いに乱れた。 電車運行の復旧を待って、わたしは吹田岸辺の長谷クリニックを訪れ診察を受け、そこから事務所に向かった。 その途上、長男か…
雨の日が続き、例年よりも肌寒い。 まだ5月なのに梅雨入りだとのニュースが流れ驚いた。 伝えられるところ史上最速での梅雨入りだという。 そんな日曜の午後、久々母の顔をみた。 時間を置いたからだろう。 ずいぶん歳をとった。 そう感じた。 自然、その半…
せっせと支度し土曜日の朝一番、家内は子らに食糧を発送した。 たっぷりと牛肉が入っていて、ちょっと手を加えた魚介類も投入された。 子らは大いに喜ぶことだろう。 好きになって結婚したとき、その後のことや生まれてくる子についてなど考えることはなかっ…
電話が鳴ったとき、家内は英会話レッスンの真っ最中だった。 わたしが受話器に手を伸ばした。 家で固定電話が鳴ることはほとんどない。 前夜は夕食時にかかってきた。 読売新聞の勧誘だった。 押し売りは困ります、とだけ言って電話を切った。 また何か営業…
作業環境は結局、似通ったものになっていく。 息子二人に買った最新のMacBookAirが軽くて速く、とても使いやすい。 わたしも使って気に入って、自宅の他、事務所用にも色違いを置くことにした。 自宅からでも持ち出せて、事務所からでも持ち出せる。 これで…
業務を終えて夕刻、雨のなか西宮北口駅まで歩いた。 阪急電車に乗って二駅先、塚口駅で降り家内に電話すると「たったいま着いた」とのこと。 旅券事務所で待ち合わせ、10年更新のパスポートを受け取った。 次に受け取るときには還暦を過ぎている。 そんなこ…
ユニフォームが8年もののお古であるとそのときはじめて知った。 流行遅れの型であることは我慢できても、綻びなどだんだん取り繕えなくなってきた。 クラブ用のショルダーバッグもチャックがすぐに壊れて耐久性がない。 この際、他の部が持つようなリュック…