最初に頼んだウーロン茶のグラスがまもなく空いた。 店員が二男に声をかけた。 お飲み物はいかがいたしましょうか? 二男は言った。 お冷やをください。 何でも好きなものを頼めばいい。 わたしはそう水を向けるが二男は首を振った。 特に飲みたいものはない…
昨年の夏は長男。 今年の夏は二男を連れて京都に向かった。 まずは開店と同時、「にし田」を訪れた。 すでに幾組もの客が順番を待っていた。 ありふれた佇まいに見えて人を魅了してやまない。 他とは一線を画す店であると、ひと目で二男にも理解できたに違い…
昨夏は帰省した長男を連れ明石の寿司大和を訪れた。 今年は二男を伴った。 昼を前に出発し玉津ICで高速を降り片道約一時間。 予約してあった座敷に陣取った。 小さい頃、二男が食べることができたのはマグロと玉子だけだった。 いまは何でもよく食べる。 し…
いま毎日が楽しいが、それなり苦労も伴った。 女房がいたから乗り越えられた。 土山人へと向かう車中、息子とそんな話になった。 女房が誰かで人生が変わる。 周囲に生きた実例が幾つもある。 目を凝らせばそれら女性の奥に潜む本質がチラと見えることだろう…
早朝、寝床のなか。 目が覚め、徐々に意識が起動していった。 前日マッサージを受けたからだろう。 快調と感じた。 そろそろ起きよう。 そう思いつつ、ふと考えた。 はい、ここまで。 もしいま唐突に人生終了の時を告げられたとしたら。 半睡半醒のまま想像…
珍しく朝の10時には家を出た。 昼前の打ち合わせ1件を皮切りに、午後に3件、夜に1件と予定が立て込んでいた。 日に5件も訪問が詰まる日など滅多にないことだった。 さあ頑張ろう。 そう思う一方で一日を思って気重さも同時に感じた。 電車に揺られながら…
節目というよりひとつの終焉。 男子50歳はそういった地点だと感じる。 そこを過ぎるともう何も身につかない。 精進したところで押し寄せる若手に伍するレベルまでには至らない。 それまでに培って身に宿った「実」以外、頼りになるものは何もない。 もはや、…
週が明けると忙しい。 日中、怒涛の業務をくぐり抜け、ようやく夜になって憩いの時間が訪れた。 弛緩のクライマックスは寝床での読書。 届いたばかりの「二月の勝者」第12巻を手に取った。 空調が効いて、洗いたてのシーツの感触が実にいい。 生きて在ること…
日曜であってもやらねばならないことが幾つもある。 あらかじめタスクノートにも記載しているから、こなしたくて仕方がない。 朝4時半に目が覚めたとき、ひとりでにカラダが動いた。 軽いものからこなしていく。 近くの給油所にまずはクルマを走らせガソリ…
用が済めば疎くなる。 二男の大学受験から半年、長男の大学受験からは二年半が経過した。 受験について考えることがなくなって、これは幸せなことと言えるだろう。 二男がこのたび帰省して先日友人らと再会した。 メンバーは大学生と浪人生が半々といった構…
せっかくだから歯のケアをしてもらおう。 母校の部活に顔を出した後、二男はそう思い立った。 夕刻、予約の時間に合わせ西田辺に向かい、きじ歯科を訪れた。 優しい歯科衛生士さんがたっぷり時間をかけ歯を隅々まできれいにしてくれた。 またねと礼を言って…
カリスマの手によるヘッドスパだけでなく、足と腕も含め計2時間の施術を受けたというから、後は楽をさせてあげねばならない。 夕飯は外で済まそうと話し、塚口の「ふじ鮨」に連絡を入れた。 店主が出たので予約したい旨を告げるが、緊急事態宣言を受け9月…
父が先。 誰もがそう思っていた。 だから顔を合わせる度、父本人を含め毎回ピンとこない感情のなかに放り込まれることになる。 残された母を皆で孝行する。 そんな図が残るはずの実家に、父がいてわたしがいて、母がいない。 解けない謎に父子で揃って首を傾…
朝、疲労を覚えた。 開店と同時、駅前のマッサージ屋を訪れた。 施術を受ける間、これまでの人生でいちばん楽しかった頃のことを考えた。 時は10年以上も遡るから、この日記を始める前のことになる。 当時、子ども達は小さかった。 仕事はたいへんだったし懐…
結果的にはこれで良かった。 大学受験を経た後、息子二人に何かをこじらせたような跡はなく、各自胸を張って生きている。 親としてほっとするところである。 こだわりを手放せないまま過去を引き摺ると、時に認知が歪む。 繰り言が話題の先頭に来るような人…