一日の終わり、西九条の大福湯でサウナに入る。
ほどよい低温でとても心地よく発汗できる。
通い詰めるサウナは数あれど、ここが一番だろう。
夕刻時、先客が二人あった。
会社の同僚同士のようだ。
いい若いものがこんな早くからサウナなんてと眉をひそめ端っこに腰掛ける。
仕事やゴルフの話に引き続き、会社の話となり、会社の女子について彼らは話し始めた。
「岡さんって、メガネ掛けたら顔が変わるな」
「そやな、目が小さなるな」
「あれレンズの加減というより、メガネのときは何かつけてるやつを外すからやろ」
「別に目を大きくみせんでも、カワイイのにな」
「おまえ、それ本気で言うてるんか」
「目になんかつけてパタパタ頑張る姿勢がカワイイやんか。でも、どうせなら手術した方がええわな、よお言わんけど」
大阪ではそこかしこ、ふんわりふんわりと漫才が発生する。
私は下を向き、しかめっ面して、必死に笑いをこらえなければならなかった。
彼らは引き続き、セクシーすぎる私服を会社に着て来る山根さんについて話し始めた。
「山根さ、誰か言わなあかんで、あの格好は行き過ぎやで」
「そやな、目のやり場に困るもんな」
「ちらちら見てるとか思われたら嫌やな」
「山根が可愛いかったら、顔でも見といたらええねんけどな」
「どっこも見るとこないからほんま目のやり場に困るで」
彼らはサウナを上がった後、ビール飲んで熱燗で締めようと話し合っている。
漫才の場が、近場の酒場に移っていく。
岡さんや山根さん風の人を街で見かけたら吹き出してしまいそうだ。
彼らのせいである。