真夏としか言う他ないカンカン照りであった。
大阪の街路は隅々に至るまで白日の直射に射抜かれ、こんな日に紺のスーツ着るなど物好きにもほどがある。
虫眼鏡で焼かれるようにして息も絶え絶え客先を渡り歩き、とうとうベンチに座り込んだ。
10分ほど腰掛け、はたと気づいて命乞いしに阿倍野の田中内科クリニックを訪れた。
院長が言う。糖質制限の加減を考えたほうがいい。
それで因果が結びついた。実はとっくの昔に気づいていたことであったが体重が減るというライフスタイルへのこだわりを捨てきれなかっただけなのだ。
階段がしんどい、書類の処理スピードと裁く分量が減っている、朝がだるい、このような自覚症状に苛まれつつ、湯浴みやごろ寝といった対処療法でしのいでいたのだった。
ああ、旺盛に働く中年男子には糖質は必要なのだった。
リアルタイムで火を噴くのにくべる薪としてデンプンは不可欠なのだ。
院長の助言に従い、糖質制限との折り合いをつけるため今日から数日、デンプンを摂取することにした。
まずは院長に餌付けしてもらうつもりである。