KORANIKATARU

子らに語る時々日記

黒毛和牛を引っ提げ帰還する大黒柱


新聞読むのもじれったいような師走直前のサンデー事務作業であるが、二男の迎えの時刻が迫ったので切り上げた。

新聞はめくられることもなくデスクの端っこに押しやられたまま。
新聞をゆっくりと読む、という日曜の楽しみはお預けとなった。
12月についてはこの調子で、新聞が手付かずのままただ高く積み重ねられていくことになるのだろう。

家内からはご馳走用意したので腹を空かせて帰っておいでとメールが入っている。
飲み物も冷やしているという。
どうせ糖質制限された人工味たっぷりのニセビールに決っている。

キリンラガーを懐に忍ばせ摘発される前、毒あおるみたいに一気に飲み干すことにしよう。
日曜夜、男子であれば正統なビールを嗜むのでなければならない。
女房に言って聞かせても分かるはずがない。
であれば、強硬手段に出るまでだ、ゴクリ一気にひと思い、事を果たす。


この日、陣中見舞いとして、星光の大先輩から堀川亭の黒毛和牛を頂戴していた。
黒毛和牛を引っさげ颯爽と食卓に参上する、一家の主として一度はやってみたい、誰だってそう夢想したことがあるはずだ。

黒毛和牛を携えた大黒柱は、どの角度から見ても神々しい。
思わず笑みがこぼれてしまう。


飲めば頭がバラだらけ。
だからこそのフォアローゼスだと思っていたがボトルの裏に由来が貼って記されている。
意中の女性が4つの大輪のバラを胸に飾ってつけていて、それが鮮烈だった。
そんな由来だというから下らない。

食後、バーボンをロックで飲みながら、リビングで勉強に勤しむ二男に目をやり、取り組む問題群を眺めるが、難しすぎて目が回る。

悪酔いしそうなので退散し、階上の長男宅を訪れる。
手ぶらも無粋と、本屋で買っておいた亜人5巻を「気分転換のときに読めば」と差し出すが、鼻で笑って突き返された。

行くあてなくなり、亜人5巻を小脇に抱えてねぐらに引っ込む。
横たわって、自らの立場を弁える。

そうそう、私は橋である。
喜んで大喜びで橋である。
子らが見事堂々あっちへ渡っていくことを見届けるまでは何が何でも頑強な橋として機能し続けるだけのこと。
ついでに言えば家内は橋の手すりのようなものだろうか。

脇役であることが生き甲斐になるほど楽しいなんて、子育て以外にはあまり例がないことだろう。