KORANIKATARU

子らに語る時々日記

男女誰もが初心に返って思い出す。


七月末日昼過ぎ、気温が35℃を越え今年初めての猛暑日となった。

大阪は亜熱帯。
猛暑日となることなど珍しくはないが、このところの暑さはこれまでとはクラスが異なる。

ああクソ暑いとぼやいて笑えたのは過去のこと。
今は眉間にしわが寄ったまま。
顔ほころばせ口開くなどあり得ない。

カラダの奥深く内臓や脳が損なわれ、一時的では済まされないほど深刻な熱の爪痕が残りかねない。
身の危険を覚えるような、害悪レベルの暑さと言えるのではないだろうか。

冷房の効いた事務所に戻ると、全身の細胞が安堵したかのような平穏に満たされる。
この暑さのさなか、舞洲球場では高校野球の大阪決勝が行われているという。

狂気の沙汰である。


この暑さであるから、外出すれば思った以上にカラダが疲弊する。

終業後、カラダのケアのためまっすぐ上方温泉一休に向かう。
熱射に焼け焦げた心身を、ぬるめの湯と水風呂で時間をかけて癒やす。

再生後、帰宅し食事。
暑い日のサウナと水風呂は最高だ、これぞ人生の味わいだと家内に話すと、そそくさ家内もクルマを走らせみずきの湯に向かった。

まさにオアシス。
近隣にいい風呂が種々あって本当に助かる。


二男は信州の地にあるが学校からは一切発信がないので、どのような様子なのか知ることができない。

金曜の登山はあと一歩のところ雷警報が出て、途中で引き返すことになった、そう風の噂で聞いた程度である。

もちろんかつてを思えば、情報が常時行き交う昨今の方が奇異なのであろう。
しかし、その奇異が徐々に当たり前のこととなりつつある時代であるのも確かなことだ。

例えば長男の学校では、泊まりがけの行事などの際、近況が写真とともにタイムリーにアップされる。
ホームページを開けばいつでも関連する情報に接することができる。

逐一何でも首を突っ込みたい訳ではないけれど、そのような情報発信があると親は心和むものである。


家内が出かけた後、リビングにて一人映画鑑賞の時間を過ごす。
今夜は少し古め、1960年公開の作品「アパートの鍵貸します」を見る。

シャリー・マクレーンが可憐可愛く、ジャック・レモンが心根優しい男子の善良を軽妙自在に演じる。

名作の所以。
ラストシーンが心に残る。

静かに満ちて広がっていくような何かについて、出会った当初のあの懐かしい感じについて男女誰もが初心に返って思い出す。

相手を少しは大事に思おう。
そんな素直な気持ちにさせてくれる映画と言えるだろう。


週末に全力投球でこなさなければならないような急ぎの案件はない。
ぼちぼちペースで過ごせる土曜日だ。

ゆっくり新聞をめくる。

毎日新聞の「名作の現場」で島田雅彦氏が太宰治を取り上げ、戦後発表された短編「苦悩の年鑑」のなかの一節を引いている。

「東條の背後に、何かあるのかと思ったら、格別のものもなかった。からっぽであった。怪談に似ている。指導者は全部、無学であった。常識のレベルにさえ達していなかった」。

そして、島田氏は次のように続ける。
「折しも戦後七十年の夏、無学な首相とその非常識な仲間たちが戦前回帰の妄言を繰り出している」。

最近の報道を通じその言動や態度を見るにつけ、首相に対する敬意の念が全国規模で失われていくのは致し方ないことであろう。

どさくさ紛れで煙に巻いてうやむやにするのかと思ったら、無邪気な子供レベルの例え話を繰り広げ、数々の懸念や疑義に対しては根拠もないのに自信満々、楽観的見通しをご開陳し心配ご無用と断ずる。

そもそもが悲観的観測を出自とするはずの法律である。
議論が詰めば楽観論でかわす、となるのであれば、これほど空恐ろしい矛盾はない。

一体なぜ堂々と時間をかけて、考え得るリスクもすべて詳らかにした上で、理解を求め是非を問うという仕方ができないのであろう。

結局はそれが一番の早道であり、私達の理解も信頼も増すはずである。

何が何でも御免被るといった、無責任で分からず屋の日本人ではない。
筋が通れば、腹を括る国民である。

ところが、まるで目くらましのように事が進んでいくだけであった。

先の戦争についての始末は未完のまま、独自の歴史認識を携えた超タカ派にも見える首相が、国民を置き去りにし自衛隊の役割拡大を唱えるのであれば、まさになし崩し、文字通りの「先祖返り」が今進行しているのかもしれないと、危惧して当然であろう。

安倍さんの真の狙いは一体何なのであろう。

「日本の平和と安全の確保」のため無私の境地で事を為している人物だと本当に信じていいのだろうか。
まさかとは思うけれど、某国の不沈空母としてそれこそ誉れと我先に名乗り上げたがるような、媚びへつらってかしづく提灯持ちの一人に過ぎないのであろうか。

f:id:otatakamori:20150801140633j:plain