1
明日からお盆休み。
出先から戻り事務所に寿司を差し入れる。
近所にある「鮮や丸」は安くて美味しい。
数日間のオフに過ぎないが、お盆と言えば日本人にとって一つの区切り。
日数的には非対称であっても、事務所業務の煩忙さを重み付けすればちょうど一年の真ん中と感じる時期でもある。
お疲れさん、お盆明けからまた頑張ろうと声をかけ、私は再び外回りに出かける。
2
電車に乗る間際、野田阪神のブックファーストに立ち寄る。
本屋があれば必ずのぞく。
この習性は物心ついて以来変わらない。
小学生のときはチャリンコに乗って近所の本屋に無闇矢鱈と出没し、懐温かい時には布施のヒバリヤ書店まで足を伸ばした。
ヒバリヤ書店と言えば、当時の私にとっては、本のテーマパーク、ワンダーランドと言ってもいいくらいの存在であった。
見渡す限り本が並び、本の世界が無限に広がる。
実際、布施周辺にヒバリヤ書店の店舗は複数あった。
まさに心はやる世界であった。
野田のブックファーストは文具コーナーを設けるとあって本棚がいくつか撤去されている。
本の数はかなり減る模様だ。
ここらも本屋の痩せる地域であるのだろう。
どこもかしこも本屋が痩せていく。
嘆かわしいことである。
小林よしのり氏の「脱原発論」と目が合う。
マンガであるから子も読むであろう。
原発について考える一つのきっかけになればと思って、レジに携えた。
3
神戸方面での用事を終え、このところ定番となった灘温泉で一汗流す。
まだ陽の高い日中、天窓から降り注ぐ光を浴びつつジャグジーに横たわる。
至福の時間だ。
汗ばめばヒンヤリ心地いい源泉掛け流しの風呂につかってクールダウン。
これまた至福。
カラダのサビを至福で洗い流し、颯爽とまた外界へと繰り出す。
やめられない。
4
帰宅すると久々、家族の気配。
二男がいて、長男もいて、家内もいる。
旅の帰途、上六の明月館で食事したと聞く。
さすがに家族。
明月館と言えば、ちょうど昨日、私はツバメ君伴い昼に寄ったばかりであった。
海南亭もあればアジヨシもあるし白雲台もある。
数ある中、行き先が明月館で一致するのであるから、やはり私達は何か通じ合う家族だというしかない。
ラグビーのお盆合宿の準備にてんやわんやの長男を横目に、二男と夕飯。
日航機墜落事故について話し合う。
先日の朝日新聞で墜落直前にしたためられたいくつかの言葉が紹介されていた。
いままで幸せだった、という言葉があり、後は頼んだという言葉があり、しっかり生きろという言葉があった。
その場に居合わせた方々の無念を思うと胸が詰まる。
一人で搭乗した少年もあった。
怖く悲しいことの尽きない世である。
5
将来、子らはどんな仕事をするだろうか。
家内とビール飲みながら話す。
ワイン派の家内もさすがにこの夏は暑さもあってビール党になっている。
何でも思ったことをやればいいが、うちの事務所も悪くない。
そう言ってみる。
自由裁量だし、その気になればそれなりの実入りも叶う。
二人が継げば、対外的な部分で長男が圧倒的な力を見せ影響力を強め拡大し、内部統制については二男が一分の隙もない強靭なシステムを作り上げ機能させるだろう。
是非仕事を発注したいという性能抜群、魅力あふれる事務所になる。
かたわらで話を聞いていた長男がぼそりと言った。
絶対に継がん。
二男も頷く。
なら仕方ない。
私がその分までこの先も頑張り続けるだけのこと。
これが天職。
それでいい。
君たちは好きなことをすればいい。
天職に出合えれば言うことなしだ。