1
イチジク生ハムをつまみにしてハイボールを飲む。
使っているオリーブオイルがひと味違うと家内は言うが味音痴の私には分からない。
おいしいか、そうでないか、私の味覚にはその二者択一しかない。
ワールドカップラグビーの話題で盛り上がる。
五郎丸のお株が主婦らの間でも急上昇のようである。
以前我が家に招いたことのあるラグビー少年の話となる。
彼らは有望だ。
日本代表となって将来、世界の舞台に立つのではないか。
知った選手がいるのであれば更に大いに盛り上がる。
日本代表が頑張って、日本国中に明るい話題が広がっていく。
彼らはまさにヒーロー、後に続く者らの夢と希望を背負っている。
2
長男は月曜、二男は水曜から試験が始まる。
ワールドカップまっただ中であるが、実はラグビーどころの話ではない。
勉強せねばならない。
しかし、ケーブルテレビでは好カードが目白押し。
四年に一度だという思いが、勉強と観戦の綱引きにおいて観戦に加勢する。
見ながらの勉強などほとんど不可能に近い。
せいぜいインターバルでページをめくる程度だろう。
さあ、どうするか。
3
マシュマロテストという実験がある。
朝日新聞の書評欄で大竹文雄さんが紹介していてはじめて知った。
マシュマロをどれだけ我慢できるか。
この欲求耐性の結果で子どもの将来が予想できる。
幼少期において待てる時間が長いほど、将来の学業成績は良く社会性もストレス耐性も高くなる傾向がある。
脳を調べると、欲求耐性が高い人は知的活動にもっぱら使われる前頭前皮質領域の働きが盛んであり、一方、低い人は、薬物中毒などに関係する腹側線条体の働きが活発なのだという。
私がもしマシュマロテストの被験者になれば、最も低劣な結果が出るに違いない。
ラーメンやビールが目の前に出されれば、即座にパクリ。
まるで爬虫類並みの反射的反応。
我が身はもはや仕方がない。
しかし子育てする親としては、このような実験について子に教え、人間となるよういざなわなければならない。
4
心理学の知見によれば、自らを「壁に止まったハエ」なのだと想像すると衝動的な欲求や感情にうまく対処できるという。
わざわざハエを思い浮かべるのも趣味が悪いように思えるので、「優雅に空を舞う蝶」であると想像することにしてみよう。
反射的な欲求や感情が生じたとき、その瞬間を捉え、ヒラヒラとそこらを舞う蝶になった自分を思い浮かべる。
そうすれば、自らの内面に何が起こるだろうか。
爬虫類的反応に駆られる自らをまずは客観視できそうである。
眼前の視界が広がって、そこだけに着眼する囚われの状態からすり抜けることができるようにも思える。
一呼吸置くことで、「視点」のチャンネルがスイッチできる。
それによって衝動は薄れトカゲ並みの悪相がほぐれていく。
実証もされた有効なテクニックであるようだ。
親子揃って、試してみることにしよう。
5
昨日の日記で取り上げた「反応しない練習」という本の中にも参考となりそうな記述があった。
『目を閉じる。
これは人生の基本にするべき重要な心掛けです。
私たちはあまりに外の世界を気にしすぎです。
いつも外の世界に心を奪われて、そわそわと落ち着かない状態になっています』
目を閉じることを、著者は推奨する。
目を閉じることで、心のなかを漂う『雑念の粒子』が見える。
やがては外のこと、人のことに惑わされない状態へと心が鎮まっていく。
『心の内側だけを見つめる。
それが自分が取り組まねばならないモノゴト、
本当の作業に向かう出発点です』
いったん視界をシャットアウトし、衝動を自らの心のうちに漂う雑念の粒子として見る。
次第に内面のざわざわが落ち着いていく。
そう思えばそうなるとしか思えない。
実用的な知恵として大いに活用できそうである。