KORANIKATARU

子らに語る時々日記

雨降る前に奈良を歩く


子らは勉強、親は奈良。
我ら下々、勉強を欠いては身が立たない。
子らはまもなく迫る試験に備えて勉強し、親は若かりし頃の試験勉強について思い出しつつ夫婦で出かける。

京都へ向かう新快速が人はみ出すほどに混み合うのとは好対照。
奈良行の新快速は空っぽとも言えるほどのすき具合であった。

ゆったり腰掛け奈良まで運ばれる。


まもなく正午という時刻、JR奈良駅は閑散としている。

土産物屋立ち並ぶ街路をぶらり北上して徒歩15分ほど。
遡ること1300年、遠い時の彼方に起源を持つ寺院群が奈良公園に立ち並ぶ。

春日大社へと続く林道を歩く。
左右並ぶ石灯籠が各時代の変遷を寡黙に物語り、威風堂々とした枝ぶりの巨木が生い茂って千古からの時間を彷彿とさせる。

式年造替の時期に差し掛かった本殿で手を合わせさらに奥へと歩を進めると、舞殿でちょうど御神楽が行われていた。
古装束の出で立ちの者らが祭礼楽器を奏でその音色に合わせ二人の巫女が対となって舞う。

はるか昔日の一場面を幻視するかのよう、そこに厳か浮かび上がった非日常に息を呑む。

引き続いては東大寺大仏殿の裏参道をのぼって二月堂を訪れる。
観光客で賑わう大仏殿のエリアと異なってその裏側は独特の静寂に包まれ更に趣き深い。

家内が御集印を頂戴する間、二月堂高欄から霧雨にけぶり始めた奈良の市街を見下ろす。
眺めの先に千年前の人々が暮らす姿を思い描く。

二月堂を後にすると緩やか下る石段の小径が続く。
雨脚が強まりたわわ実る柿が雨に打たれ石壁が濡れる。
大仏殿裏の芝生の上に毛並み美しいイノシシが何するでもなく佇んでいる。
時が足を止め、そこにだけずっと雨が降り続くかのよう。


京都のような人混みもなく、ちょっとした散歩でめぐってこれほど余韻馥郁となる一帯はないだろう。
三時間足らずの滞在であったがしーんと心静まるよき散策となった。

JR奈良から大阪へと向かう新快速も座り放題という程にすいていた。

車中、みやげものをつまみ食いしながら家路につく。
乗り換えのとき、焼肉ソウルを予約する。
夕飯は家族揃っての宴となる。
舞も雅楽もないけれど、バラとハラミがあればいい。

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