1
月曜朝の乗り切り方にはコツがある。
今朝もいつもどおり4時に目覚める。
昨日張り切って2時間も走ったせいか疲労感が残っている。
今日を皮切りに平日が続く。
ヒタヒタと迫り来る現実から目を逸らしたい。
しかし時間は容赦なく過ぎていく。
もう朝なのだ、ぐずぐずしていられない。
ここでいったんアホになる。
何も考えない。
押し寄せる課題の影すら見ないよう思考のスイッチをオフにする。
そして自らに甘言をささやく。
今日は事務所に行って暖房のスイッチを入れるだけでいい。
仕事はそれだけ。
しばらくの間コーヒーでも飲んで座っていよう。
部屋が温まった頃、職員が現れる。
そのとき、ごきげんようとだけ言葉発して立ち去ればいい。
それでおしまい。
後は自由だ、好きにすればいい。
たまにはそんな日があってもいいさ。
それならば、とカラダが起き上がる。
軽く支度しクルマを走らせる。
世界チャンプを目指す訳でもなければ、天下人になろうと焦がれる訳でもない。
朝が待ち遠しく飛び起きて、血気盛んに仕事の渦に飛び込んでいく、といった勢いなど出るはずがない。
ハードルを極限まで下げてはじめて一歩が踏み出せる。
2
デスクに着席しコーヒーを飲んで一呼吸置く。
せめて課題の書き出しくらいはしておこう。
それくらいのやる気は生じてくる。
A3ノートを広げる。
うすらぼんやり鉛筆を削って、まずは日付を書く。
頭に浮かぶ順に当面の課題を走り書きしていく。
ざっと見渡し、簡単そうなものを赤鉛筆で囲む。
しばらく見つめる。
あら不思議。
赤で囲った課題に取り掛かりたくなってくる。
仕方ないので課題をこなす。
ひとつ終われば、その箇所を青鉛筆で塗りつぶす。
段々興に乗ってくる。
次々、赤が青で塗り替えられていく。
やがて塗りつぶす箇所がなくなって、難度高いものまで赤で囲んでひと睨み。
もはやエンジンが温まった状態。
明け方の憂いなど記憶の彼方。
仕事の海を前にしての水際の処し方だけが問題ということである。
立ち上がりさえ騙し騙ししのいでざんぶと飛び込めば心はいつしか戦闘モードに入って、天下を目指すほどに勢いづくことになる。
あとは力尽きるまで仕事をこなし続けるだけとなる。
3
赤と青の鉛筆を使って課題をこなすわたしのやり方はどうやら理に適っているようだ。
今朝の朝日新聞の天声人語はまさに赤と青の話であった。
情熱の赤に対して沈着の青。
赤は血や火の色であり青は空や海の色。
色が心身に影響を与える。
課題を赤で囲めば何かが掻き立てられ挑まずにはいられない。
それを青で覆って一段落。
青が涼風を誘って心は爽快感に満ちる。
赤が闘志を呼び覚まし青が奮闘を癒やし労う。
長い書類屋生活を経て知らず知らず、わたしは色を味方にする術を身につけていたようである。