午後は外回り。
普通電車を使う。
ゆったり腰掛け南へと向かう。
空調が強めに効いて、熱でしなだれかかった意識が明瞭さを取り戻していく。
居心地がとてもいい。
だからこその普通電車だ。
学生らに混じって天美で降り、顧客事業所を訪問する。
事務員が応接室へと案内してくれる。
「熱いのがいいですか、温かいのがいいですか」
一瞬耳を疑って、えっと聞き直す。
事務員は繰り返した。
「熱いのがいいですか、温かいのがいいですか」
熱さと温かさが同時に押し寄せ、下火になったはずの猛暑がまた全身を覆い始め息苦しいような思いとなった。
冷たいのをもらえますか、と私が言うと、事務員ははい、承知しましたと笑顔で応えた。
女子事務員は自らの言い間違いに全く気付かなかったようだ。
大阪南部はひときわ暑い。
引き続いても電車を使う。
5分も歩けば朦朧とするような生命脅かすほどの暑さである。
電車の空調で心身の緊張がほどければ、誰だって寝入ってしまう。
わたしは寝過ごし終点阿倍野橋で見知らぬお婆さんに膝をトントン叩かれ起こされた。
一眠りして心気回復。
わたしは南へと引き返す。
この日、最終地点は河堀口。
河堀口と書いて、「かわほりぐち」とは読まず「こぼれぐち」と読む。
この伝でいけば、目鼻口と書いて「めはなだち」と読むことにも納得だ。
あの人は「めはなだち」がいい、と言う場合の「めはなだち」を漢字にすれば目鼻口。
つい最近までわたしは知らなかった。
意味を考えれば腑に落ちる。
目鼻口がいい、つまり細部に渡って顔がいいということである。
夕刻となっても厚かましいまでのふてぶてしさで暑さが居座っている。
這々の体で事務所に戻ってラストスパート。
残処理終え、やっとのこと終業となった。
家内のブログを読みつつ家へと向かう。
かなりのレベルで彼女はセンスがいい。
情景やちょっとした言葉をキャッチする感性が優れているので、読んで心に残って、なんだかとてもあたたかで、いい気分になれる。
帰宅すると焼き肉が待っていた。
二男が食べ、わたしが食べ、最後に帰ってきた長男が食べ、焼き肉はこれでもかというほどに我々に捧げ続けられた。
途中電話が鳴った。
家内が受け、67期の後輩からの電話を66期の先輩へと取り次いだ。
いつかこの先、67期の後輩君もこの焼き肉の宴に参加することになるだろう。