KORANIKATARU

子らに語る時々日記

男子もうかうかしてられない

空にカメラを向けている少年がいる。
それを見て今日は中秋の名月の日であったと思い出した。
ジョギングしつつわたしも夜空を見上げる。

真ん丸な月の輪郭は薄雲の向こうに隠れている。
シャッターチャンスは当分訪れそうにない。
頑張れ少年。

走り終え風呂をあがって食卓につく。
今夜も実にさっぱりとしたヘルシー料理が前に並べられる。

サラダに豆腐に魚の煮物。
シンプルな素材であるが手が凝っているのが分かる。
中年太りを亭主に持つと女房はたいへんだ。

同時に食卓についた長男は何にしようかと思案して麺類を所望する。
支度してあった料理に加え、うどんも即興でこしらえられた。
ちょっとした料理屋みたいなものである。

食後、前夜同様テレビの前でひととき過ごす。
ちょうどニュースの時間帯。
KBSでは各地で見える中秋の名月がライブで紹介されている。

出演者はみなこの日の礼式にかなった民族衣装を纏い、メインの女性キャスターの美しさは名月をしのぐほどにも映えている。
見映え主義のお国柄。
美貌で比較しKBSは大韓航空を上回り、容姿端麗・才色兼備の頂点に立つのが彼女だと考えて間違いない。

もしわたしに娘がいたらとの想像がよぎる。
わたしに似れば祟りも同然。
容姿がもの言う世界では生涯陽の目見ることはないだろう。

娘を不憫に思うが、しかし思い直す。
顔だけが人生ではない。

日本においては女性の就業率向上が喫緊の課題となっている。
この先数年で、女性誰もが当たり前のように働く社会が到来する。
それはもはや決まりきったこととさえ言える。

だから、どんな仕事に就くのがか重大事。

これはもう、夫選びなどよりはるかに重要だろう。
夫ではなく、真の相棒は職業能力。
もう時代はそうなりつつある。

だから、容姿よりも仕事。
切り口変えれば不細工なわたしの娘であっても十分に勝算ありだ。

娘かわいや、かわいや娘。
であれば注力すべきは教育、教育がすべて。

一人前の職業者になれるようその支援に全身全霊を傾けることになるだろう。

美人アナウンサーを眺めつつ、存在しない娘について空想を巡らせていると、リビングに人の気配がなくなった。
ここぞとばかりパンを一房盗み食いする。
家内がこの日料理教室で作ってきたものだ。

ふんわりとしてとても美味しい。

急に二男のことが思い出される。
いま南部にいる二男は夜食の時間が終わった頃だろうか。
硬いメロンパンにパックの牛乳。
食べ盛りでは物足りないだろうし、第一、美味しくないだろう。

家に帰還できる日を指折り数えていることだろう。
艱難汝を玉にする、である。

親元離れ一回り逞しくなった男子がまもなくお家に帰ってくる。
こちらもその帰りが待ち遠しい。

そうそう、男子もうかうかしていられない。
優秀な女子らが日々その能力値を高めている。
ちょっとした幸福でさえ高嶺の花となりつつある時代だ。
男子だって努力と精進が欠かせない。