久しぶりに黄色のシャツに袖を通した。
前回着たのはいつだったか。
日記を見れば一目瞭然、2013年6月。
家内と尼崎の名店、志津鮨を訪れたときのことだった。
3年以上も前のことになる。
結婚前の誕生日に家内から贈られたシャツである。
かれこれ17年もの長きに渡っての付き合いということになる。
ちなみに、長男誕生前夜もこのシャツを着ていた。
夜、電話があってバルナバ病院に駆けつけた。
病院の廊下で一晩過ごし、ちょうど明け方、わたしは長男の第一声を耳にすることになった。
黄色のシャツも長男誕生の瞬間に立ち合ったということになる。
この夜、家内との待ち合わせは北新地アバンザ前。
わたしが先に着いた。
週末金曜、待ち合わせ風の人がちらほら見える。
風が冷たい。
上着やセーターなどが欲しくなるような肌寒さを感じる。
そうなると人恋しさも募るというようなものだろう。
そんな季節が訪れつつある。
ビルの中に入って待つことにした。
黄色のシャツだけではなく、靴もズボンも眼鏡も家内が選んだものだ。
カバンは家内のお下がりであるし、財布も先日プレゼントされたもの。
中身以外はすべて家内の見立てということになる。
中身、こればかりはどうにもならない。
時間どおり現れた家内を伴い、今夜定例会の場所へと向かった。
このところは名店めぐりの様相を呈している定例会である。
堂島レジャービル前でちょうど天六いんちょ夫妻と出くわし、一緒に4階にあがった。
[実は前日が奥さんの誕生日。食事中にサプライズが用意されていたことが後で判明する]
纐纈(コウケツ)の扉を開けると、相良さんがすでに到着していた。
カウンター席に腰掛ける。
背にクッションが置かれ、とても座り心地がいい。
ゆったり映画観るのにも適した快適さ。
その予感のとおり、纐纈(コウケツ)が供する一品一品は、まさに鑑賞に値する作品レベルのものだった。
料理が小皿に美しく佇んで、まずはしばらく見入ってしまう。
素材や味付けに細かな工夫が凝らされている。
料理に詳しい家内が解説を聞いてしきりに感嘆の声をもらしているので、極上級のハイセンスなのだと食に不案内なわたしでもその凄さが理解できた。
ラインナップも素晴らしかった。
日頃接することの少ない、玄人好みする珍味のオールスターメンバーと言えた。
トップバッターに小気味いい歯ごたえのぶどうイカ、そして稗や粟など雑穀をブレンドさせたさば寿司、クエの刺し身、すっぽんの吸い物、ハモ松茸フカヒレ三つ巴の土瓶蒸し、ずわいがに、とろけるような焼き加減のノドグロ、ここで会ったが百年目ホンモノの天然ウナギ、エトセトラ、エトセトラ(なんということだろう、バラエティに富み過ぎて絶品の料理が記憶からいくつもこぼれ落ちてしまっている)、締めくくりは炊きたてのご飯に、からすみやいくらやさんまが添えられ、それに手打ちの蕎麦が加わった。
料理が絶品であればお酒もすすむ。
ビールで乾杯した後は、白ワインにうつり、ビール休憩を入れ、赤ワインにうつった。
家内とわたしで白一本、赤一本は空けたのではないだろうか。
今月三回目となるお酒をわたしは心ゆくまで堪能できた。
聞けば店主の纐纈(こうけつ)さんは、島之内の一陽から二年前に独立しこの店を構えたのだという。
一陽を訪れたのはいつだったか。
日記はこういうときに役に立つ。
2012年12月だと即座明らかとなる。
当時も一品一品にうならされた。
それが飛躍的に進化し究極の完成形に至ったのが、纐纈(コウケツ)の料理だと言えるだろう。
思い出に残るほど良い食事をする場合には、うってつけ。
これまで訪れたお店のなか抜きん出てのナンバーワンだと断言できる。
かなり気に入ったと見えある先生などは早速再訪の予約を済ませていた。
次回定例会は11月、おそらく西宮で行われることになる。
日時確認し、今宵、大満足の宴はお開きとなった。
二次会へと向かうメンバーと別れ電車で帰途についた。
黄色のシャツとともに長く記憶に留まる素晴らしい一日となった。