KORANIKATARU

子らに語る時々日記

こんな花見も悪くない

桜ノ宮に差し掛かって、車窓から見える景色が一気に華やいだ。
ひしめくように立ち並ぶ桜の木のなかを電車に乗って運ばれる。
が、まもなく京橋駅。
我に返った。

傘を差し顧客先へと向かう。
未明から降り出した小雨が止む様子はない。

昔、理科で習ったとおり。
春典型の天気が続いている。

前線伴う低気圧は、膝高く上げ疾走する左右の足のように見える。
まずは温暖前線が地上を横断し、長くしとしと雨が降る。
引き続いて、寒冷前線。
強く激しい雨が降って、気温が下がる。

そして、高気圧が間に入って次の低気圧がやってくる。
その繰り返し、繰り返し。

京橋で老社長となごやか話していると、電話が入った。
急遽対応すべき案件だ。
挨拶もそこそこにその場を辞し、わたしは事務所へと舞い戻った。

事務所に戻ってツバメ君とともに一心不乱、作業に没頭してるとメールが入った。
家内からだ。
弁当を持ってきたので駅の改札まで取りにきて、ということだった。

あいにく切羽詰まって手が離せない。
弁当はいらないと返事するが、もうそこまで来ているというからやむを得ない。

持ち場を離れて、駅へと向かった。
朝早くに出るときは今度から弁当を用意しなくていい、そう言って弁当を受け取った。

見渡せば、どこもかしこも飲食店。
弁当がなくても食うに困ることはない。

忙しいときには忙しいことが重なって、結局、弁当を食べる時間はなく、あっという間、東大阪へと向かう時間になって、わたしはまた事務所を後にした。

へとへとになって事務所に戻って、午後7時。
やっと一段落、小休止となった。

気づけば腹が減って仕方がない。
そう言えば家内の持ってきた弁当があった。
蓋開けると、二つ添えられた半熟卵がつややか輝き、食欲をそそる。
もちろんおいしく、食べ進むうち煩忙で生じたささくれもすっかり癒えてきた。

メールを見ると家内からの写メが届いていた。
満開の桜。
家の真ん前に見える桜だ。

手作りの弁当を食べつつ、画面に映る桜に見入る。

こんな花見も悪くない。
一口一口味わって、わたしはささやかな春を満喫することになった。

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