KORANIKATARU

子らに語る時々日記

仕事で遠出するのもたまにはいい

遠出する一日となった。

このところ関わり始めた業界の元締めさんがいらっしゃる地。

仕事するうえでこちらから挨拶に出向くのが当然という話であった。

 

電車に揺られる時間は嫌いではない。

遠足のようなものでありいい気分転換になる。

 

もともと、ひとつ処にいるよりもあちこち駆け回る方が性に合っている。

 

子どもの頃、習字やそろばんを習わされたがじっと座っていることができず、続かなかった。

いまもそう。

三つ子の魂百までとはよく言ったものである。

 

駅に降り立つ。

見晴らし良く、風かぐわしく流れて心地いい。

 

一時間に一本しかないバスを待つ。

バス停に人影はない。

 

ロータリーに一台だけ停車しているタクシーの運転手がこちらにやってきた。

どちらまで、と話しかけられ、iPhoneのグーグルマップを見せた。

 

運転手は見積額を言うが、バスなら数百円。

迷う余地はなかった。

 

定刻どおりバスがやってくる。

車内に人影はない。

 

市街地らしき地区をすぐに過ぎ、無味淡白な幹線道路をバスがひた走って、間もなく見晴るかす田畑広がる地にバスが停車した。

 

そこがわたしの目的地であった。

 

あたり見回すが人っ子ひとりない。

クルマがなければ暮らせない、そういった土地であった。

 

グーグルマップを頼りに歩き出すが、広々とし過ぎていても人は道に迷うものであるようだ。

結局電話し迎えにきてもらうことになった。

 

相手の手を煩わせない。

それが信条ではあるが背に腹は変えられなかった。

 

小回り良さそうな軽自動車がまもなくやってきた。

挨拶を済ませ助手席に腰掛け、道中、あれやこれや話すが、見知らぬ土地で隣り合って話せばおのずと親近感が増していく。

 

初対面なのに昔話に花まで咲いて、予定をオーバーして長居することになった。

もちろん帰途も駅まで送ってもらった。

 

未知の土地での良き出会い。

 

駅のホームで汽車を待つ。

夕刻間近の風に木々の葉がそよいで、ひと仕事終えた充実感のようなものが込み上がってくる。

 

わたしの仕事も満更捨てたものではない。

そう思える遠出の一日となった。