たまには一人で酒場のカウンターに腰掛ける。
大体は野田阪神の馳走という店。
安くて美味い。
昨晩もジムを終えてから立ち寄った。
焼き物、揚げ物、煮物、炒め物、それにお造り。
何を注文しても外れがない。
だからいつだって店は混み合っている。
誰が誰だか分からない。
誰も話しかけてこないし、誰とも口をきく必要がない。
すべての役割から解放されて、名無しの権兵衛としてそこに憩う。
昨晩もいつもと同様、ビール2本に小品3皿で小一時間ほどを過ごした。
吊革につかまっての帰途、息子らを伴っての酒席の場面がふと頭に浮かんだ。
そう遠くない日、男三人で静か酒を飲むようなことがあるだろう。
先日観た『密偵』のなか印象深いシーンがあった。
ソン・ガンホ、イ・ビョンホン、コン・ユ。
男三人が上海の地で向かい合う。
どでかい酒甕にあふれんばかり入った酒を言葉少なに飲み干していく。
あとで思えば、その酒席こそが彼ら三人の契りの場面であった。
ひたすら飲み続けそこに一枚岩の結束が生まれたのだった。
お酒には人間同士を強く結びつける何かがある。
だから、お酒は大事な誰かとだけ飲むものだと思っていい。
誰彼構わず一緒に飲むのだとすれば節操がない。
飲む相手は選んだほうがよく、一緒に飲むなら心して飲むべきだ。
子らに重々教えておかねばならないお酒心得の第一条と言えるだろう。