日曜日の昼下がり、インターフォンが鳴ってドラマが始まった。
届け物を受け取るため家内が階下に降りた。
戻ってくるとき、家内の表情と足取りはミュージカルの主演女優のごとくであった。
試験中であるためリビングで勉強中の息子が、そのミュージカルの一部始終を見届けることになった。
歌って踊りつつなのであろう、わたしにメールが届いた。
肉が届いたとの知らせのあと、嬉しすぎとの言葉が続いた。
可愛いタコマークの入ったその文字面から、笑顔満面の家内の様子が目に浮かんだ。
わたしは事務所にいて、ちょうど同じ時刻、宅急便を通じ同様に松井先生からの肉を受け取ったばかりであった。
こっちにも肉が届いたと返信したのであったが、それは家内にとって、離れ離れであった一対の神器が千年のときを超えて出合う奇跡の報せのようなものであった。
その返信を受け、バックミュージックの音量が増し、彼女を照らすライトの光量が増した。
そして、家内の声量はいや増しとなった。
活気づいた家内は早速、夕飯の支度に取りかかった。
予定されていたカワハギ鍋はこの夜、出番を失った。
肉の祝宴が執り行われるのであるから出る幕などなかった。
ちょうど一升瓶サイズの赤ワインが陽の目見る日を待っていた。
その深紅はこの宴に献納されるにふさわしいものであった。
下の息子の帰宅に合わせわたしも家へ向かった。
途中、えのき茸と白ネギを調達し連れ帰った。
これで役者が揃った。
テレビではM-1グランプリがちょうど始まったばかりであった。
すき焼きを家族で囲み、ほっぺが落ちて腹を抱えてという躍動の夕飯を楽しむことになった。
試験前なので子らは早々にリビングから退散したが彼らの勉強の進行を阻むほど、わたしたちは大きな声で笑って、肉を食べて美味いと感嘆し、ワインを注ぎ合った。
多くの方々の情けに支えられてこの日々がある。
その幸福に芯から感じ入る日曜の夜となった。