試験が終わり学校は休みになっても部活はある。
この日の練習は昼から。
じゃあ朝9時に食堂で集合。
宿題を一気に片付けてしまおう。
そう約束して皆と別れた。
が、翌朝食堂に現れたのはたったの一人であった。
ひとりだったから集中できた。
その方がかえって良かった。
そんな息子の話を家内から聞きつつ、待ち合わせ場所である道頓堀から地下に降り千日前線に乗った。
この日は家内との忘年会。
向かうは小路にある今里あじ平。
ふぐ料理の老舗名店である。
凍てつく夜道を西へ歩いて5分ほど。
暗がりにぽっかり浮かんで、なかの活況が外からでも分かる。
今夜もあじ平は満員御礼大盛況であった。
一歩入ってすぐ眼鏡が曇った。
眼鏡を取ってあたりを見回す。
どこもかしこも賑やか楽しげ。
どの笑顔も鍋から立ち上る湯気でふっくらふくよか膨らんで見えた。
何が美味しいといって、ふぐほど美味いものはない。
だから食べれば、ふぐをかたどったような笑顔になるのも当然の話だった。
そんな雰囲気につられて、わたしたちは食べる前からにやついた。
まずはビールを注ぎ合った。
一年おつかれと乾杯し、そして宴の火蓋が切られた。
ゆびきとてっさを口に運び、鍋に分厚いを身を投入し、時にかわを湯にそよがせる。
すべての一口一口が美味体験でたまらない。
白子はとろけてこれもたまらず、カレー塩つけて食べる唐揚げも風味よく食べ応えあってたまらない。
大満足という到達点が時間を追うごとどんどん塗り替わっていく、喜びが右肩上がりとなっていく宴と言えた。
もうこれ以上は無理というところで、締めに雑炊一人前を注文した。
女将さんが手際よく雑炊を作ってよそってくれた。
帰途はポカポカ。
電車に乗って家路についた。
たまには女房と忘年会。
とてもいい一日になった。
忘れるには惜しい一年であったこと心から感謝したい。