年が明けたと思ったら1月も最終日。
早いものである。
2018年の日常の時間割もあらかた決まって落ち着いてきた。
業務を終えてのスローダウンの時間は、ジム・メシ・フロの三点セットでほぼ固まりつつある。
仕事で焼けてただれた頭を走って整える。
それでご飯を食べれば、千々に乱れた心も癒えて満たされ、お酒は不要。
風呂でカラダ温め、あとは寝てゼロリセットするだけ、となる。
1月末日も通常通り滞りなく進んで、あとは風呂へと向かうだけとなった。
先週、和らかの湯で新春ガラガラくじを引いて出たのが白球。
つまりは最下等の外れであった。
その後一週間通い詰め、手元の抽選引換券は4枚に達していた。
まもなく5枚揃うことになり、再挑戦が果たせることになる。
しかも新春抽選会はこの日が最終。
他の風呂に行く選択肢などあるはずがなかった。
前回は、無味飾り気のない白玉に言葉を失った。
さあ、今回は何が出るのか。
わたしは、まっすぐ抽選特設コーナーに進み出た。
壁一面に貼られた景品一覧が目に入る。
主だった品の箇所には、いくつも当選者の名が記されている。
一等賞は32型の液晶テレビ。
大した品ではないにせよ、当たった人は大興奮であっただろう。
さあ、わたしの番である。
前回同様、何でもないといった風にぶっきらぼうにガラガラをまわした。
人間の察知能力や、恐るべし。
玉が飛び出る瞬間には前回との違いを感取した。
その玉は明らかにオーラを放っていた。
名付けてグリーン。
そこに姿を現したグリーンに手応え感じ、すごいことになったのではとわたしは固唾を呑んだ。
が、係のお姉さんの発した声があまりに平坦で、その平坦さから、わたしは悟るべきを悟ることになった。
大福箱。
差し出された箱にはそう書かれてあるが、中身は不明。
「あ、あの人、なにか当たったじゃん」と言われる程度には目立つ箱だった。
結構な品物なのではないか。
悟ったはずなのに、わたしの胸は高鳴った。
脱衣所で服脱ぐより先に、箱を開封した。
なかに佇んでいたのは、レトルトカレーの3点セット。
うちの家内は料理の練達。
レトルトなど邪道の部類。
歯牙にもかけないはずである。
やはりそう。
前回確信したとおり、もらって戸惑うようなものしか当たらないのだ。
しかし、不思議なものである。
そんな風に憎まれ口をたたきながらも、当たったことが、何だかとても嬉しい。
まわりくどいが、当たるというプロセスを介せば、何かが見違えるのだろう。
だから例えばこの人生も、五感で満喫サバイバルの旅3万日分が当たったのだと思えば、輝き増して見えてくる。
そんなことをぼんやり思いつつ、露天の湯につかって南の空を見上げた。
ちょうどこの夜は皆既月食。
午後9時前、部分食が始まる頃合いだった。
赤み差す月夜の地上で真っ裸。
晴れがましいほど清々しい。
天体ショーが同時進行するなか湯にくつろいで、カラダはポカポカに温もった。
あとは寝るだけ。
ちゃんとレトルトカレーも携えた。
キッチンのはじに不法投棄するみたいにこっそり捨て置いた。
誰かの非常食くらいにはなるだろう。