KORANIKATARU

子らに語る時々日記

胸躍るような未知の世界

奈良へと向かう大和路快速がホームに入ってきた。

窓際に座る若い女性がはりつくようにして外を眺めている。

アジアからのツーリストだろう。

笑顔が可愛い。

 

目が合って、ホームに立つわたしの頬も緩んだ。

 

旅する彼女にとっては胸躍るような未知の世界。

その胸躍る世界に、わたしは属しているのだった。

 

ちょうど今しがた理不尽なクレームの電話を受けたばかりだった。

いいことばかりで世界は構成されておらず、たまには頭がおかしくなりそうな話も聞かされる。

ホームは吹きさらしで風冷たく、話しは長引き、携帯持つ手が凍りつくかのようであった。

 

仕事中はフィールドのなかインプレーの状態にある。

普通の競技と異なり飛んでくるボールは一つとは限らない。

 

あちこちからボールが飛んできて、それだけでなくカラダぶつけられたり、スライディングされたりもする。

優しく肩に手を置かれたり、頭を撫でられたりといったことは滅多にない。

 

それでめげてしまうとこの仕事は立ち行かない。

毒添えて痛打されようが、蛙の面に小便。

小便の温かみにニヤつけるくらいで一人前と言えるだろう。

 

手はかじかむが、ほやほやの温かみで頭はホット。

そのタイミングでアジアの可愛いツーリストを見かけたものだから、心まで暖まった。

こちらの世界もいろいろあって結構楽しい。

頬ゆるめた中年の表情からそう伝わっただろうか。

 

お互い、良い旅となりますように。

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2018年2月5日13:45 京都 北野天満宮の梅