天王寺駅を降り時計を見ると18:50を過ぎていた。
開宴は19:00。
遅れるのは失礼だ。
わたしは歩調を速めた。
二分前に到着し、やれやれ一安心。
が、座敷に案内されて驚いた。
人影はなかった。
点となった目がもとに戻りはじめたとき、カネちゃんが姿を見せた。
星光生はいつだってどこだったパンクチュアルなのだった。
そうこうしているうちに出席者で座敷は埋まり、乾杯の発声があって宴がはじまった。
阿倍野の魚市は魚が美味しい。
鯨ベーコンやカラスミといった珍味から始まって、豪勢な刺し身盛りがテーブルを飾った。
打ち解け過ごすうちあっという間にお開きの時間が迫った。
見れば手付かず残った料理が山ほどあって勿体ない。
子らの顔が浮かんで、わたしは店員から折詰を幾つももらって、ふぐの唐揚げや寿司、鮎の丸焼きなどを詰めていった。
各席を渡り歩きせっせと豪華な料理を詰めていく。
童心に返って小川のせせらぎで魚捕りでもしているようなものであった。
折詰を握りしめ、わたしは家路についた。
子らの喜ぶ顔が思い浮かんで、幸せ噛みしめるような思いで電車に揺られた。