帰宅し真っ先に夜食のメニューを聞く長男に対し、家内は言った。
お好み焼き。
そんな階下でのやりとりを耳にし、寝床で横たわる私の頭にお好み焼きの像がありありと浮かんだ。
家内が作るお好み焼きはめっぽう美味しい。
お好み焼きに淡い恋慕の情を抱きつつわたしは眠った。
明けて朝。
玄関に置かれた弁当バッグを携えわたしは職場へとクルマを走らせる。
胸すくような土曜の晴天、吹き込む風が清涼で心身まるごと浄化されるみたいで心地いい。
事務所に着いて朝食用の弁当ボックスを開けて驚いた。
お好み焼きだった。
百年の恋が実ったようなものであった。
幸先いい。
今日は必ず良い日になる。
今夜は飲み会。
久々会う友人らと一献交える。
体調は万全。
月曜から金曜まで炭酸水で過ごした。
正確に言えば、水曜の昼、お客さんに招かれたイタリアンでワインが開いて、無下に断るのも無粋であり、そのような場ではよほどの事情がないかぎり同化するに越したことはなく、それで少しばかりは口をつけ、あまりに美味しく数杯分は口に含んだのであったが、その程度では飲んだうちには入らないだろう。
さあ、飲もう。
今夜集まるメンバーの飲むモチベーションはすでに最高潮に達している。
はしゃいで意気込みすぎると飲みすぎる。
もう子を持つ大人同士。
加減わきまえつつ、ゆるりゆるり品ある酒盛りを心がけようと思う。